第13話 「イスラム社会では、女性から男性に向かって好きですとは、言えない」 …らしいです。だから、ある人たちに、頼みごとをするんだそうな。

 どうやら、これを作ったのは、デルヴィーシュと呼ばれる托鉢僧に、ハーキムと呼ばれる僧侶ではないかという。

 何だか、ファンタジーな名前だ。

 中東地域では、僧が、女性の恋札を作るのか。何だか、巫女さんみたいな。

 ハーキムは、モスクに勤める僧侶ほどのイスラム知識はなかったけれど、宗教的立場にいたそこそこの、プロ。

 病気を治す力があるとも、信じられていたんだとか。

 巫女?

 シャーマン?

 どっちにしてもも、悩み事の、大きな相談役。

 願掛けには、もってこいだろう。

 村の女性たちは、誰にも言えないような悩みを、ハーキムやデルヴィーシュまで、打ち明けにいく。そこで、いくらか金を払って、札を作ってもらう。

 「今では、お守りのようなそのおまじない札を作ってくれる人はいないかもしれませんけれどね」

 へえ。

 その札には、中東地域の女性たちのドキドキ悩みが、書かれているんだろう。

 「好きな人に、思いが届きますように!」

 「赤ちゃんが、ほしい!」

 イスラムの女性だって、恋はするさ。

 気持ちを伝え会える場所は、自分たちで、作るのか。

 女性は、努力。

 イスラム社会は、宗教的に、厳しかった。女性は、自分のほうからは、恋の気持ちを伝えることができないらしい。

 愛されても、愛することはできない。

 「イスラム社会に生きる私たち女性には、恋の告白はできません。自分のほうからアクションをとれないから、ハーキムやデルヴィーシュに頼んで、呪文を唱えてもらう!」

 ドラマチック、ですなあ。

 「イスラム社会では、女性から男性に向かって好きですとは、言えない」

 …らしいです。

 それが、この水飲み場があることで、救われるようになる。女性も、心からの気持ちを表すことができるようになったと、いうわけだ。

 恋は、工夫で呼び込む。

 良いじゃないか。





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