第11話 ある泉で、女性が祈る。「あの人と、結婚できますように!」 「元気な赤ちゃんが、産まれますように!」 「旦那が、浮気しないように!」

 中東地域の女性たちには、恋話があった。

 イランでは、サッカハーネと呼ばれる場所が、舞台なんだそうな。

 サッカハーネというのは、公共の水飲み場のこと。

 町や村の通りに、いくつも、設けられていたんだとか。

 このサッカハーネが、水飲み場以外に、祈りの場としても使われていたという。

 面白いじゃないか。

 水を飲むついでに、お祈り。

 おしゃべり。

 日本の感覚でいけば、日々、家内安全を願って手を合わせるような、近所の神社と似ていた?

 違いは、神様。

 サッカハーネは、水飲み場ということもあり、神様はいないという。単に、近所の憩いの場。

 何かのついでに、寄る場。

 水飲み場を取り囲む柵には、リボンが結びつけられる。誰かが、そこで、願い事をしていくから。

 神社のおみくじを木に結ぶのと、似ていたね。

 ろうそくに火を灯して、願掛けをする人もいたという。

 この水飲み場、サッカハーネで祈りを捧げるのは、ほぼほぼ、女性。

 家族のこと、学校のこと、健康のことなどを祈る。

 今では、コロナ感染についての祈りが多かったけれど…。サヤさんが訪れた当時に多かったのが、恋の祈り。

 「あの人と、一緒に帰れますように!」

 「結婚、できますように!」

 「旦那との間に、元気な赤ちゃんが産まれますように!」

 「旦那が、浮気して、他の女性についていかないように!」

 このような、恋に関する祈りは、モスクという大礼拝堂では、できない。

 イスラムのモスクでは、人間の愛については受け入れてもらえないものらしいから。イスラム社会では、アラーへの愛が一番大切なのだから、ごもっとも?

 でも、それじゃ、つまらない。

 そこで、サッカハーネが、大活躍!

 「サッカハーネは、個人の恋のことも、受け入れてくれるんです」

これなら、中東地域の女性も、燃えますなあ。





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