第5話 「運転手の近くに、若い女性が乗ってはいけないんだ。ムラムラっときた運転手の男が、かわいそうじゃないか!」笑っちゃう話、だよ。

 「良し。乗れ」

 やばみなボディチェックが、終わった。

 席を替わるなら良いと言われて、バスに、乗り込んだ。

 「サンさん?」

 「はい」

 「バスの一番前の席に、女性が座っては、まずかったらしいんです」

 「サヤさん、どうしてです?」

 「運転手の気が散るから、いけないんですって!」

 「え?」

 「私、笑っちゃいました」

 中東地域では、前回わかったように、自分の家に入ったときの女性は、黒のチャドルを脱いだ。

 大好きな旦那には、思いきり、セクシーな格好で迫ってみたかったみたいだし。家の中では…ね。

 家の外では、厳しかった。

 バスの運転手のおじさんは、外では、女性の華やかさがないので、イライラ。

 ということで、すぐ近くに、特に若い女性に座られちゃうと、ムラムラッと、きちゃうらしい。

 そうか。

 そうか。

 おじさんも、大変なんだねえ。

 「お前は、そこに座るな!」

 今度は、警備隊じゃなくって、運転手に怒られちゃった、サヤさん。

 「この地域じゃあ、バスに乗るとき、運転手の近くに、若い女性が乗ってはいけないんだ。男が、かわいそうじゃないか!」

 サヤさんは、バスの、もっと後部のほうの座席に移動させられてしまった。

 「私は、そんなにも、若い女性…?わけ、わからない」

 サヤさんは、悩んだという。

 笑っちゃう話、だよ。

 前列から後ろのほうに座ると、今度は、客サービスがはじめられた。

 「お前さんも、気の毒になあ…」

 「良く、戻ってきたよ」

 「おかえり」

 「バスが、動いた」

 「これで、安心だ」

 そんな意味の言葉が、かけられ…。

 サヤさんの元に、菓子やら、ヒマワリの種が、回ってきたという。

 「不思議。私の前の席には、太ったおばさんが座っていたのに。なぜか、その人には、皆、気を遣っていませんでした」

 その理由がわかったのは、帰国してから!




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