30日目 ありがと炊飯器

 落ち込むことはあるが、それでも無駄に死なないこの身体には朝が来る。


 生きてれば腹が減る。


 午前を怠惰に過ごし、午後からスイッチが入ったこまりは掃除をしていた。


 スマホをテレビにスクリーンミラーニングさせ、動画サイトを映す。


 小学生の頃、好きだったアニメの主題歌を流しながら、部屋を掃除していく。


 アニメの内容よりも、何故か主題歌の方が頭に残っていて、聞いていると歌詞が浮かんで歌えてしまうから不思議だ。

 暗記テストがあって、覚えたはずで、しかも身近に出てくる日本の地名は全然頭に残らないのに、何故実用性のないことは残るのか。


 楽しくないからかしら?必要性を感じていないからかしら?


 常識の無さを自覚しつつ、なかなか改善できない。社会人になったときに買った『冠婚葬祭マナーブック』的な分厚い本は何回開いただろうか?ついついスマホで適当に調べてしまうが、その情報が確かなものかはわからない。

 自身の適当さにこまりは嫌気がさしていたが、生活していて特に困り事もないので、放置していた。


 掃除が終わり、音楽を流したまま、冷蔵庫からブライン液に浸けておいた鳥むね肉をこまりは取り出した。


 自分が賢くなくても、長い年月をかけて、沢山の賢い人々の知恵を終結して完成した文明の機器が私の家にある。


 今日は君だ!その実力を見せてくれ!


 こまりは鶏肉を切って、耐熱性のジップロックにいれた。今日はタイ風の味付け、調味料もいれて袋の上から揉みこむ。空気を抜いて炊飯器に被るくらいのお湯と共に入れて、保温をオン。


 一時間くらいしたら、タイ風のサラダチキン的なものが出来上がるはずだ。


 炊飯器便利。明日はちゃんと朝起きて、久々にあれを作ろう。


 こまりは明日できる予定のものを想像して、楽しくなった。


 ぼんやりしていたら、保温時間が長くなりすぎて、ちょっと焦った。


 それでも、鶏肉は柔らかくて美味しかった。


 炊飯器ありがとう。


 また明日もどうぞよろしく。


【今日できたこと】

 ・機嫌よく歌う

 ・ヘルシークッキング

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