夏祭り

俺は騒がしい音が鳴り響くその場所に歩みを進める。待ち合わせ場所には、とても綺麗な白髪をした凛ちゃんがたっていた。


「とても綺麗だよ。凛ちゃん」

「ありがとうございます。なかなかの時間かかったんですよ?」


そう言ってクシャりと笑った。凛ちゃんは俺の目を見ると、少し逸らして右手をこちらに差し出した。顔を赤くした凛ちゃんの意を汲んだ俺は、自分を勇気づけて握る。


「手、大きくなりましたね。なんか緊張してしまいます。なんであの時は恥ずかしくもなく繋げたのでしょう?」

「俺はあの時も今もガチガチに緊張しているぞ」


そんなことを言いながらゆっくり一歩を踏み出す。小さい頃の冒険を思い出す。


二人で街を探索したり、山の中に入って虫取りをしたり、時には川なんかに入ってビショビショになって怒られたりもした。


高校生活も長い。これからも多分、冒険をすることは出来るだろう。でもそれはどういう関係で、するのかということである。


知り合いとしてなのか?友達としてなのか?それとも……。


「りんご飴ありますよ!美味しそうです」


そう言ってパタパタと歩いていく。俺の手を引っ張りながら歩いていく姿に、凛ちゃんが成長したんだなと思う。いつも俺の後ろをついてきていた彼女はもういないのだ。

でも……。


「俺も食べよっかな。買ってあげるよ」

「ほんとですか?ありがとうございます」

「遠慮しないのな」

「人の好意はありがたく受け取るのが、私なのです」


そう言って、りんご飴を頬張る凛ちゃん。あまりジロジロ見ていると、なんですか?と怒ってきそうなので一瞬だけ見て俺の頭の中でリピートすることとしよう。


「あともう少しで花火が始まるらしいですよ。行きましょう。あの時の場所に」

「穴場だもんなぁ。あれは凛ちゃんが迷子になって見つけたんだっけ?」

「それは言わないお約束です。あれは私があの場所に導いてあげたんです。まぁ、冗談ですけど。ほら、行きましょうか」


あの時は凛ちゃんは俺を見つけた瞬間に泣き出してしまった。そして抱きついてきて、寂しかったといった。その時に俺は二度と一人にはさせないと誓ったのだった。そんな思い出が蘇るこの場所。凛ちゃんもどこか恥ずかしそうに、頬をかいている。


凛ちゃんはこちらに勢いよく振り向くと、浴衣の袖を強く握りしめて、弱い笑みを浮かべる。そして俺が1番聞きたかったことをいう。


「私、引っ越しさせられたんですよね。いじめられてるのを親が気づいて、同じ子達と中学校には通えさせないって」

「あぁ……」

「私は大成くんがいるから引っ越したくなかったんです。でも決まったことだから……。だから!逢いに来たんです」

「そんな……。俺はただ凛ちゃんに好きって一方的なことをしてただけで……」


俺がそういうとブンブンと横に首を振る。そしてガラスのような壊れそうに笑う。掴んでいた俺の手をより一層強くする。痛いとも思えるが、彼女の顔を見ていると、そんなことも忘れてしまう。


「そんなことないです!辛かった……学校に行きたくないって思っていた私を救ってくれたのは確かに大成くんでした。私のヒーローだったんです。初めて声をかけてくれた、その時から」


爽やかな風が、彼女の背に吹く。凛ちゃんの甘い香りが俺の鼻をくすぐる。それでも俺は……。


「俺は凛ちゃんに好きって言っていただけで……」

「私のことを好きって言ってくれたのは大成くんだけでした。それに大成くんのおかげで自分の白い髪を好きになれました」


そして、彼女は大きく息を吸い込むと俺に向かって叫んだ。


「あの時から愛してます!大成くん!私と付き合って貰えますか?」


凛ちゃんは俺の事を見ない。彼女は小さく震えている。俺の返事は決まっていた。


「凛ちゃん、俺も好きだよ。大好きだ!」


俺がそう言うと同時に安心して、ぐちゃぐちゃに泣いてしまっている凛ちゃんが、こちらに向かって走ってきた。


そして俺に向かって抱きつく。あの時よりも重い凛ちゃん。俺の胸元に飛び込んで来た瞬間に、一つ目の花火が打ち上がった。俺が凛ちゃんを見つけた時とおなじ。


でも、あの時とは違う。今は相思相愛。列記とした彼氏と彼女。今もすすり泣いている凛ちゃんの背中を擦りながら、大きく打ち上がった花火を見る。


「凛、綺麗だよ」

「それはどっちがですか?私がですか?それとも花火がですか?」

「凛だよ。凛も敬語じゃなくて、ゆっくりでいいからタメ口で話して」

「わかったよ。大成くん。彼氏と彼女になったんだし。……してもいいよね?」


そういうと、こちらを向いて凛は目をとじた。俺は顔を近づけてキスをする。長い、長いキスだった。愛を確かめるように。


「ぷはぁ……。大好きぃ、大成くん」


そう言って蕩けた顔でこちらを見る凛。そんな姿を見ても、俺はウェディングドレスを想像した。少し重いかもしれないが、それくらいでもいいだろう?


俺が過去の俺に言いたいことはただ1つ。


『お前が好きな人と結ばれたぞ』と。


♣♣

一応、完結です。感想貰えると嬉しいです。雑な文章に最後までお付き合い頂き、ありがとうございました。

後日談、欲しかったら書きます。







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小さい頃にいじめられていた女の子を好きになって構いまくっていたら、私のヒーローだと告白される話 伊良(いら) @hirototo

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