海の帰り

俺たちが帰る時には、太陽は沈んで夏だが少し涼しい気温になっていた。正面から吹き付ける風は気持ち良い。


「足がもう動かないです。はっちゃけ過ぎました」


俺の自転車の後ろで足をパタパタとさせる凛ちゃん。そりゃ一日中遊んでいたら、体力は持たないだろう。俺もクタクタだが、凛ちゃんを家に送るまでは力尽きることは出来ない。


「大成くん、大きくなりましたよね。小さい頃は私の方が大きかったのに、あったら私より大きくなっててびっくりしました」

「成長期だからな。身長もあくまで平均くらいだぞ?それに凛ちゃんも成長したと思うぞ?」


俺がそう言うと、凛ちゃんは俺の脇腹辺りをつねる。そして冷えた声で、


「下ネタですか?」

「そ、それもあるが人と上手く話せるようになってるじゃないか」

「努力しましたから。あの時は大成くんさえいればいいと思ってましたが、そうはいかなくなりましたから」


そういうと彼女は腰に回していた腕を軽く強くした。離さないと言わんばかりに。多分、わざと胸を当てている。


なんだかむず痒くなって話を変えようとするが、墓穴を掘ることになる。


「夏祭りは浴衣で来てくれるのか?小さい頃は来てくれたよな」

「着てきて欲しいですか?後、ほかの人も誘わなくていいんですか?これじゃまるでデートだって思われますよ?」

「別にいい。俺は凛ちゃんとだったら勘違いされたっていい」


言った瞬間、恥ずかしくなって凛ちゃんのことを見るが、手で顔を抑えて俺から見えないように隠していた。


「そ、それはどういうことですか?あ、あれですか?彼女と思われてもいいってことですか?」

「まぁそういうことになる。凛ちゃんの彼氏だと思われることは嫌なことじゃない。それに、思ったんだよ。凛ちゃんが他の人の彼女になるのは嫌だって」

「そ、それは……」


何かを凛ちゃんが言いかけた時、ちょうど彼女の家に着いた。少し寂しそうにその言葉を飲み込む凛ちゃん。


「ほら、着いたぞ。夏祭り、楽しみにしてる」


俺は何か、俺を突き放す言葉を言われるのが怖くてここから早く逃げ出したくて、別れの言葉を言う。


そんな時、凛ちゃんが俺に向かって叫ぶ。


「夏祭り楽しみにしてるねー!」


敬語が抜けたあの時の凛ちゃんのような声だった。その声を聞いて胸から溢れる好きの気持ちが止まらなくなったことに気がついた。






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