攻める大成くん

教室を急いで出ていった凛ちゃんが、若干気まずそうに帰ってきた。いつも通りのクールな顔に変わっていたが、さっきの照れていた時の顔がチラつく。


「さっきはごめんなさい。私なんかに手を握られて嫌でしたよね。男の人と関わることなかったから分からないんです」


そう言ってぺこりと頭を下げる凛ちゃん。俺が知っている限り、男を誑かすようなタイプじゃないだろう。でも少なからず、中学校ではモテたことだろう。


「凛ちゃんは中学校で付き合ったりしなかったの?」

「あー、私は女子中だったので、男の人と関わらなかったんです。強いて言えば校長先生くらいですかね」


そう言って、乾いた笑い声を上げた。引っ越して私立の中学校に通っていたのか。引っ越しの理由を聞いていいものか、そんなことを悩むが個人的なことなので、やはり躊躇われる。


「でも、小さい頃と比べてコミニケーションとれるようになってるじゃん。あの時は俺が周りの人と関わるのを邪魔してただけだろうけどさ」

「そんなことない、です。あの時、多分大成くんが引っ越して来なかったら、学校にいってなかったと思います」


両手をグッと握って、こちらを見つめてくる。必死なその姿に思わず目を奪われる。でもそんな風に呼ばれるようなことはしていない。


「凛ちゃんは俺の事を過大評価しすぎだ。俺はそんなやつじゃないし、あの時は凛ちゃんのことが好きすぎて周りが見えてなかったし」

「……好きすぎて!?」

「あの時は、だけどな」

「でも、嬉しいです。私のことを好きだったっていう時期があったって言うだけでも」


そう言って満面の笑みを浮かべていた。やめてくれ。そんな顔をしないでくれ。また、凛ちゃんを好きになってしまう。


また、どこかに行ってしまうのが怖くて、人と深く関わることはしないと決めたはずなのに。


「今は……私のことどう思ってますか?やっぱり黙っていなくなった私は嫌いですか?」

「そ、そんなこと……」

「まぁ、そうですよね。私が大成くんならこんな女、嫌ですから。いいんですよ」


そう言って、元気なく笑う。そんな顔が嫌いで、俺は思わず手を握る。その表情を変えて欲しかったから。その作戦は的中する。


「はぅっ///ど、どうしたんですか、大成くん?」

「俺が嫌いなやつの手を握るようなやつだと思うか?」


俺も顔が赤いと思う。特別な意味はない。男ならこんな可愛い女の子の手をとると、顔が赤くなるだろう。これは生理現象で……。


「やっぱり大成くんは優しいです」


この時、教室からは春から夏に変わる、暖かい風が吹いた。凛ちゃんの白い髪がなびく。


それと同時に、俺の胸も暖かくなったのだが、これも生理現象ということでいいだろうか。


♣♣

甘いなぁ。

星が欲しい(切実)




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