学生は勉強

桜はとうに散ってしまって、木は緑になり月は7月となっている。皆は夏休みの予定を決めていく。そんな時期である。


そんな中、隣席で次の漢字の小テストのテキストを片手に持った凛ちゃんが話しかけてくる。いつもは騒がしいクラスも直前のテストのために勉強している。


「大成くんは賢いんですか?小さい頃は賢かった記憶があるんですけど」

「まぁ、小さい頃はなぁ……。でも学校で10位以内にはいつも入ってるけどな。勝負するか?」


凛ちゃんは待ってましたと言わんばかりに、笑った。漢字のテキストには暗記するために何度も見直したのか型が残っている。それを証拠に、ちゃんと勉強したんだとは思っていたのだが。


「じゃあ負けた方がひとつ言うこと聞くってやつでいいですか?ラブコメっぽいやつ、してみたかったんですよ」

「俺と凛ちゃんがラブコメするのか?」

「そ、そうですよ!展開的は!ですけど」


少し声を裏返しながら凛ちゃんがいう。少し不機嫌そうに顔をふくらませた、凛ちゃんはテキストに目を戻した。そして真面目な顔に戻って、じっと漢字を見つめている。


ちなみに俺は漢字を見ている、凛ちゃんを見ている。いやらしい意味はなくて、小さい頃のことを思い出していた。いつも戦いを挑んでくるりんちゃあに負けていてあげていたことを。


懐かしいなと思って笑う。そんな俺に気づいたのか、凛ちゃんは少し不思議そうな顔をする。


「そんなに見つめられると、少し困ります。私が可愛いのは知ってますが。冗談ですけど」

「いや、凛ちゃんは可愛いよ」

「ま、またそんなこと言って!ほら、テスト始まりますよ」


悪いが、この勝負勝たせてもらう。特に凛ちゃんにしてもらいたいことは無いんだけど、負けるのは悔しい。もう負けてあげないといけない歳じゃないんだから。


「こういうのは私が勝つのがラブコメのセオリーだと思うんです。なのに……」


10点満点中満点の俺と9点の凛ちゃん。どちらも高得点なんだが、俺の勝ちである。


「何の願い事、聞いてもらおっかなぁ」


少し悪代官風に、呟いてみると少し顔を赤くした凛ちゃんは自分の胸の当たりを隠す。


「私は美味しくないですよ?」

「いや、食べ頃だろ」

「大成くんがえっちです……」


そんなことを言いながら少しだけ嬉しそうな凛ちゃんに少しだけクラっとくる。何か間違えをおかしそうなそんな感じ。


「じゃあ一緒に夏祭り、行こっか」

「……え?わ、私とですか?彼女さんとじゃなくて?」

「……うん。どうかな」


凛ちゃんは持っていた漢字テストの端を少しシワが出来るくらいに、握って俺の方を見て赤いままの顔で、


「お願いは絶対なので行きます。誘ってくれて、ありがと。大成くん」


そう言って凛ちゃんは笑った。俺は凛ちゃんと行く2回目の夏祭りになる。行く前から、楽しい気持ちでいっぱいだ。


誘う時に手汗がやばかったのはまた別の話。


♣♣

何が、頼むことないだよ!

星が欲しい。

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