凛ちゃんとお昼ご飯

どうでもいい午前の授業はずっとニコニコとしたままの凛ちゃんを眺めながら過ごした。ずっと笑顔だったので、周りの人から引かれていないかどうか不安だったが、美人なので絵になるのだ。


お腹すいたなぁと思っていると、4時間目の終了のチャイムがなる。チャイムよりも先に俺の腹時計が先にお知らせしていたのだが、それよりも早かったのは凛ちゃんの方だろう。


「……大成くん、もしかして聞こえてました?」

「お腹すいたなぁ……凛ちゃん」

「恥ずかしい……です」


そんなことを言いながらでも、自分のお弁当箱の準備をするので、よっぽどお腹がすいていたのだろう。青色とピンク色のふたつのお弁当。よく食べるんだなぁ。小さい頃は給食をよく残していたのに。そんなことを思う。


俺は両親が忙しいので、購買でパンでも買いに行こうかと思っていたら、凛ちゃんに呼び止められる。


「偶然、お弁当箱をふたつ持ってきてしまったので良かったら入りますか?」

「い、いいのか?でもふたつ持ってくるってどんな間違いだよ」

「……兄妹のを持ってきてしまいました」

「凛ちゃんって兄妹いたっけ。俺の記憶ではなかったような」

「そんなことより、ほら食べましょう」


そう言って青色のお弁当箱を俺にくれる。おかずにはタコさんウィンナーとか可愛らしいいかにも女の子なお弁当箱である。が、ご飯の部分にはハートが縁取られていた。


その部分を凛ちゃんに見せながら、苦笑いをしてみせる。すると、焦ったように手をパタパタとさせて凛ちゃんは、


「……お母さんっ!」


そう言って俺のお弁当箱を取り上げた。そして凛ちゃんはこっちに指をピンと立てて、いかにもツンデレツインテールちゃんのように、


「こ、これに深い意味は無いんだからね。これは……お母さんがふざけてしただけで」

「そうだろうと思ってたよ。まず俺に向かってハートなんておかしいし、小さい頃だって俺が一方的に好きだっただけだし……」

「そんなことない……」


凛ちゃんはなにかをつぶやくが、上手く聞き取れなかった。でもその後にため息を着くと、もう一度、お弁当箱を渡してくれた。


「少しだけお母さんに手伝ってもらいましたけど、ほとんど私が作ったんですよ。すごいと思いますよね?」

「すごいと思う。小さい頃は卵焼きを焦がして、よく俺が後処理させられてたっけ。これならいいお嫁さんになるよ」


俺がそう言うと、凛ちゃんは少し不敵な笑みになって、


「私をお嫁さんに貰ってください。……なんて冗談ですよ」


一言目から冗談まで少し間があったために俺は本当に言われたのかと、気が動転してしまった。そんなわけないよな。俺は凛ちゃんのハートのお弁当箱を食べ始めた。


一方で……


(大胆すぎたかなぁ。恥ずかしい……。無理しなきゃ良かったよぉ)


そんなことを1人思う凛ちゃんであった。


♣♣

弁当作ってきて貰えるって幸せな事だよね。親に感謝しよー。

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