第4話メンター記念日
「医学部を受けてみようと思うんです。」
カリフォルニアワインをml単位で飲ませてくれるカジュアルなワインバーで、
彼は目を輝かせながら言った。
そして、一週間徹底的にリサーチしたという
社会人を受け入れてくれやすい全国の医学部とその学費の情報を語り始めた。
「スポーツ選手育成のメンタルや体調を
情報分析して指導出来るようになりたくて」
私は、中学生の娘の陸上のコーチの指導メニューが厳しすぎて、彼女を含む何人かの女子生徒が、生理不順になったり貧血になっている事を
彼に話していた。
「子供の成長に合わせた正しい指導には
データ解析が必須だと思うし、そういう意味では自分の能力が少しでも役立てると思うんです」
直感的に「甘い」と感じた。
10倍近い倍率の受験、莫大な費用、年齢差、
最短ストレートでいったとしても一人前になるには8年はかかる。体力もいる。
でも…
「今までモヤモヤしていた霧がすっと消えて
自分の道が真っ直ぐ開いた気がしました。
マホのおかげです。
合格するまで俺の一番の理解者というかメンターというか、とにかく応援して欲しい」
彼の手には、すでに勉強を始めた形跡のある
数3の参考書が握られていた。
こうして私は彼のメンターになった。
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