第11話 滅びの島到着

物語の途中でごめんなさい。作者です。

読んでくださり本当にありがとうございます。励みになっています。


※この先にある、リズの説明している部分は、読まなくても大丈夫です!


ーーー


「ねえ、結局精霊ってなんなの?」


リズが都の要望に応えて即席空中ブランコ、空中アクロバットを気の済むまで行ってくれたため、にっこにこ笑顔の都は思い出したようにそう聞いた。


「精霊はね、色々な種類があるんだよ。

まず、微精霊。これは空中をふわふわ漂ってたりとか、森の中とか、探せば多分どこにでもいる。具体的にこれは何なのか?っていうのは分かっていなくて、何らかのエネルギーの集合体であるとか、虫けら程度の知能を偶然手に入れた清らかな空気だとか、物に宿った念であるとか、精霊界から漏れたほこりだとか……色々言われてる。まあ、よく分かってないんだよ」


「微精霊に知能があるの?」


「そこも諸説ありだよ。精霊たちは、精霊術に適性のある“精霊に近いもの”に引き付けられていくっていう話はしたでしょ?この引き付けられるっていうのが、知能があるから分かるのか、それとも磁石みたいにソレに意思はないのか…」


「よく分かってないんだね。それで?」


「次に精霊って呼ばれるものだね。これは総括した方の精霊じゃなくて、精霊の中の一つの名称である精霊……ややこしいな。こっちには意識はあるだろうって思われてる。悪い子でいると、寝ている時に精霊にどんぐりの実を枕元に置いていかれるよ、とかいう言い伝えもあるぐらいだし。いたずら好きだって言われることもあるけど、そこらへんは分からない。“精霊に近いもの”には友好的だってされるね。これにも理由があるんだけど、一旦これは後ね」


「うんうん」


「次に、何らかの異常変化があった精霊。これはさっき話したばっかりの精霊に一括りにされることもあるね。普通、マナは魔法になったり魔法陣を通すまでは、まっさらな何の変哲もないものなんだけど、精霊と結びつくことで変になったりする。その結果として、炎の精霊だとか、水の精霊とかが生まれる。精霊術師はこれらの精霊を使って精霊術を行うんだよ。この精霊の持つマナを、別の物やら生き物やらに付属させる」


「あ、頭がいっぱいになってきた…!ストップ!」


「あっ、ごめん!……しばらく誰とも喋ってなかったせいで、何かこう、すっごく喋りたくなってしまって…?あとミヤコが何も知らないから、逆に、何て言うんだろう、物知り風に見せたくて……?教えたくて……?んんん???」


ストップされて、逆に頭がこんがらがってしまったリズと、色々な話を詰め込まれた都は、頭から湯気が出そうな程である。



「説明聞くのは楽しいんだけど、情報が多すぎて追えなくなってきた!」


「うわぁぁぁぁぁご先祖さまみたいにはならないって決めてたのにぃぃぃぃ!!」


あっけらかんとそう言いきった都に、何やら思うところがあったらしいリズが真上を見て叫んでいる。

空中でなければのたうち回っていたであろうその叫びに、都の好奇心は膨れて「ご先祖さまって!?」と聞くが、「ごめん今は無理…アレと一緒だなんて…」とリズに拒否されていた。






そうこうして飛び続けていると都が、光の糸の終着点が見えた!と叫んだ。


「あの島!というかあの島にある、あの木に向かって伸びてる!」


「えっ?」


「真正面の!大きな木の周りにがらくたが積み上がってるところ!」


「待って。一旦落ち着いてね、ミヤコ。真正面に、島があるんだね?」


「あるよ!……えっ、もしかして見えない!?」


「見えないね。……ふふふ、この私の目を欺くだなんて、何千年ぶりかな!?」


「リズ、わくわくしてる?何で?」


「私はね、まあミヤコからしてみればあんまりそうは見えないかもしれないけど、ヴァンパイアの真祖にかなり近くて───古き血、とか、始まりの血って言われるような、ヴァンパイアの中での位が超高いうちの一人なんだ」


「つまり、そのリズに見えないから、この島はすっごいってこと?」


「そう!ミヤコの見えるその島全体に結界でも張ってあるのか、よっぽど凄い魔法使いでもいるのかって────ふふ、闘争心が疼くんだよ」


「バトル!?」


「相手がその気なら。…そもそも、その相手もとっくに毒ガスで死んでるかもね。そしたら目くらましの方法を見に行くつもりだよ」


「私も!私も見たい!」


尖った犬歯をむき出しにして、獰猛に笑うリズ。その笑みを見た都は、リズがそこまで言うものならきっと面白いと、笑みをこぼしている。



「でも、リズに見えないならどうやって行くの?」


「まずはミヤコが見える通りに降りてみる。それで島に降りれたら最高。地面にさえ降り立ってしまえば流石に見えるようになるはずだからね。もし阻まれたら……」


「もし阻まれたら?」


「強行突破。殴る!」


「おおー!!!」


手を叩いて喜んだ都だったが、そのわくわくした意思に反して、意外にもあっさりと地面へと降り立つことが出来た。



「見えるようになったよ。それに、私が何の対策無しに入れたってことは……どうやら隠すことに全特化しているだけで、何かを阻んだりとかをする力はないね。───つまり、ここも毒ガスの餌食になってる」


「あれ!あの木に繋がってる!」


「へえ……!ここまで大きな精霊樹は見たことがないよ!」


「精霊樹ってなに!?」


「精霊樹っていうのは───」



爆音が、轟いた。



その時二人の会話をぶった切ったのは、激しい爆発音。

否───それは、爆発音のような盛大な音だったが、そうではなかった。


人が、その手に持った刀を思いっきり真下へと、地面を巻き込んで振り下ろした音だった。


素晴らしい危機反応能力だと褒めたくなるほどに、都がその刀の軌道場所から飛び退いたのをリズは横目で見ながら、リズもまた都と正反対に飛び退く。



リズと都、その二人が大きく飛び退いたその中央に人影が一つ。



「やっぱり悪の組織の仕業だったのね!君、大丈夫よ、このわたしが助けてあげる!さあ、今すぐ、この悪趣味な幻を終わらせて!この吸血鬼!!」

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