第6話 砂の城攻略

「うん!聞きたいこと全部聞いた!探検しよう!」


「ええっ、全然重要なこと話しきってないよ?いいの?」


「それはこれから聞いてく!」


「これからかあー…ふふ、いいね。すっごくいいよそれ!そうか、これからずっとミヤコと一緒か!」


城を探検しようと意識を切りかえた都にリズは苦笑しつつ、その後の都の発言にぱぁっと顔を輝かせる。


「ずっと?」


「そう。ずーっと。契約を破棄するか、私が死ぬまで絶対に離さない契約。───ふふ。これは契約前わざと内緒にしてたんだけど、いや?」


「全然!むしろ大歓迎!私はリズの寿命に合わせられるんだよね?」


「そうだよ。ふふ、ミヤコは私が死んだ時寿命が来てたら死ぬ。それに、寿命じゃなくても外は人には生きられないからすぐ死ぬだろうね。私の寿命が来たら共に死ぬとは言ったけど────私、もう数千年は生きてるけど全然死ぬ気配がないから、ミヤコも何千年も生きなきゃいけないよ」


「色んなとこ行けて、色んなことできて、時間制限なし!嬉しい!ありがとう!」


「ふふ、あはは、あはははは!ミヤコ、やっぱり君はおかしくて、最高だよ!」


リズは赤い目を細めて笑った。



ーーーーーーー


「ここの城、リズはもう全部見たの?」


「全然。というか私、人の血の気配感じたから超急いで走ってきたの。ここは全然知らない場所」


「元いた場所ってどれくらい遠いの?」


「人なら超急いで5日くらいの場所だね」


「うーん近いのか遠いのか」


「あっ異世界人の歩くスピードはもっと遅かったっけ。それに魔法も使えないんだよね?」


「えっ魔法!?」


「魔法は超我慢強いような人しか使えないからミヤコには無理だと思う」


「そっかーじゃあいいや。リズは使える?」


「もちろん。しかも吸血鬼は吸血鬼特有の魔法がある」


「見せて!」


「ミヤコが今日一日動けないくらい血をくれるなら出来るよ」


「…やっぱいいや」


都は途端に魔法への興味をなくした。

都は我慢強いとは真反対の正確であるから、何か一つに膨大な時間をかけることはない。

ましてや今は城の探検もやりたいのだ。もうすでに城の内側に入れているのに、まだ他のことに時間をかけるなど都にはできない。


一瞬で、輝かせていた目が元に戻ったのを見て、リズはふうんと何かを考えた。


「じゃあ城一緒に探検しよう!」


「ふふ。怖くはないの?」


「何で?」


「だって、ここは砂で出来てるんだよ?しかも人が絶滅してからだいぶ経った。誰も手入れなんかしていないよ?」


「だって、楽しそうじゃん」


「あっははは、本当にミヤコって人として生きるのに向いてないね。でも人だからこそ会おうと走ったことを思えば、最高だと思わない?」


「私はリズに会えて最高だよ?」


「そう!あはは、うん、ありがとう!」


ぺたぺたと城の壁を触り始めた都を、にこにことリズは眺める。

そして、壁の一部の出っ張りを都は躊躇うことなく押した。リズはその出っ張っている部分が押されて凹んだのを見て、ん…?と首を傾ける。



ガゴン!!


砂の城から聞こえる音としては相応しくない、何かの機械が動くような音がした。


「わあ、ラッキーガール。いきなり引き当てたね」


「ふふん」


パチパチと拍手するリズと自慢げの都のいる部屋が、ゆっくりと下へ下へと下がっていく。


「なんか急に近未来的になったね」


「配線だらけだね。ここの壁もいつの間にか砂がなくなってスベスベな感じになったし」


段々と砂の城の内部とは思えない見た目になってきた。都はそれはそれで面白いらしく、大はしゃぎしている。


「どこまで降りてくのかな?」


「ミヤコ、やばくなったらぶっ壊して出れるから安心してね」


「メタルっぽくて超硬そうだけど、手痛めない?」


「大丈夫。ただの金属。弱い」


「ただのきんぞく」


ガチャン、と耳障りな音を立ててようやく部屋の下降が止まった。


部屋にある唯一の出口からは廊下が見える。


「掃除されてないショッピングモール」


「それ異世界語?」


実際、都の表現はかなり正確であった。

都とリズのいた部屋もエレベーターと酷似しており、都のテンションは少し落ち着いた。

どんなロボとかお宝とかが出てくるかと待ち構えていたら、ようやく見えた廊下の床はまさしくショッピングモールのあの床である。


「あっちにドアがあるね。開ける?」


「開けるに決まってる!」


テンションダウンした都だったが、鉄で出来た銀色の重厚な扉を見て、再びハイテンションになった。



ギギギギ………

耳障りな音を立てて、その扉は開く。

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