第13話 生きている限り守る

ここは本部。


臨時で作った地下室だ。


この地下室はいざというときのために数千人は収容できるようになっている。


しかし、テントが用意できるはずもなく、雑魚寝にならざるを得ない。


「飯用意したぞ。」


「ありがとう。」


リーリルはウェイがくれた粥をかき込んだ。


「体調は?」


「へいき。」


「それはよかった。」


あの時以来、なぜかリーリルとの会話が少なくなった気がする。


それもそのはず。


2日前にロトージから言われたあの言葉が今でも引っかかっているのだ。


2日前


「ウェイいるか?」


「最初からいるよ。ここに。」


「暇か?」


「お前の話に付き合えるくらいは暇だ。」


「よし。じゃあ話すか。今回話したいのはリーリルのことについてだ。」


「リーリル?何のことだ?」


「避難中ゾンビに襲われたとき、リーリルは吐いたことは知ってるよな。」


「その場にいたのは俺だからな。」


「まあそうだ。それで、吐しゃ物を回収したわけだが、なんとその吐しゃ物は血液が少量混じっていた。」


「血液!?」


「そう。血液だ。そこからその吐しゃ物の遺伝子を解析したところ、驚きの答えが出てきた。」


「何?」


「ラフレシア菌が入り込んでいたんだ。」


「え?!ってことはっ!」


「今後の動向次第にもよるが、早急に対応しないとゾンビ化は免れない。しかし、薬の完成には3か月以上の時間を要する。一応サンプルはあるから、今から制作することもできないわけではない。しかし、薬の完成を待っている暇はねえ。あの娘を一刻も早く始末する必要がある。」


「は?!そんなことが簡単にできるとでも?!俺たちに敵でもない一般人を殺せっていうのは、俺に向かってハンバーグにソースをかけろと言っているようなものだぞ!」


「早く手を打たないと多くの人が死ぬんだぞ!」


「だとしても、罪のない人を殺すなんて。」


「お前の言いたいことは痛いほどわかる。だがこれだけはわかってくれ。最善の結果を得るには時に最悪の選択をしなければならないことがあるんだ。」


「っ!」


「まあどう判断するかはお前次第だ。俺は一切口を出さない。だが、結果が出てからではもう遅い。それじゃあ。」


そういうとロトージは去っていった。


その時以来、あまりリーリルとしゃべっていない。


他の生存者に飯を運ぼうとしたとき、リーリルが声をかけた。


「最近私の前でだけ不愛想になるけど、何があったの?」


どうやらバレていたようで、ウェイは真実を打ち明けた。


「あの液体によってこんなことに…。私は殺されなきゃいけないの?」


「ゾンビ化する兆候が発見されたらそうなるな。もっとも、最終選択権は俺にあるが。」


「そんな…。」


「だが安心しろ。これだけは約束する。」


「何?」


「俺が生きている限り、お前を死なせるような真似はしない。俺はお前を生きている限り守る。」


「!」


「だからお前は何も気にするな。いいな?」


「はい!」

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