キャンプ襲撃

第9話 本部キャンプ

「よし。付いたぞ。ここが本部だ。」

「ん?見たところただのキャンプ場ですよ?」

「ただのキャンプ場を再利用して作った避難所だ。ホテルは陥落しやすいからな。キャンプ場は何が来ても防衛ができるんだ。」

「へえ。」


車を駐車場に止まらせた。


「じゃあ、俺とグレートは本部報告に行ってくるから、お前はリーリルと生存者を頼む。」

「分かった。」


ロトージとグレートと別れた後、ウェイとリーリルと生存者二人はテントへ向かう。


もう一人の生存者は帰還途中で拾った生存者だ。


途中、魚のいい匂いがした。


そのにおいをたどっていく。


そこには


「お、ウェイじゃねえか。任務はどうだった?」


隊服の上に赤いジャケットを着て、煙草をくわえながら魚を焼いている男の姿があった。


「お前か。フィル。任務は二人生存者を救出できただけ。三人ゾンビに殺された。」


「そうか…。それはすまなかったな。聞いて。」


煙草の煙を吐き出しながらフィルが言う。


「フィル。言っただろ?こんな時間に魚を焼きながらタバコを吸うなって。後ろには未成年がいるんだぞ?タバコの煙がこっちにとんできて健康被害起こしたらどう責任取るんだよ?大体まだタバコ吸えるようになってそんなに時が過ぎてないのに吸いまくって大丈夫か?」

「すまんすまん。これからはやめとくわ。」


フィルはタバコを投げ捨てると、その捨てがらを足で踏んだ。


「それで、そこの後ろの二人が生存者か。魚3尾用意しといたから食うか?」

「ありがとう。テントで食うよ。」


そういってフィルと別れを告げた。


「さっきの人は誰?」


リーリルは聞いた


「俺の友人、フィルだ。あいつからはいつもタバコのにおいがするから、あいつの前で息を吸うなよ。」


リーリルはうなずく。


生存者二人をテントに入れてやった後、ウェイはリーリルのテントを探した。


「よし。ここがお前のテントだな。床には羽毛マットが敷き詰めてあるから寝る場所の心配はしなくていい。むしろここで暮らしていたらすぐ寝ちまうだろうな。」


「へえ。お風呂は?」


「あるが、不幸なことに男湯の湯が冷水になってしまってな。女湯一つの混浴になっちまってる。現在も原因を探しているが、まだ冷水のままだ。さすがにそれは嫌だろ?」


「まあ、ね。」


「だとしたら近くの川の水を焚火で殺菌してドラム缶かなんかにぶち入れて入ってくれ。実際俺たちはそうやって入ってる。」


「結構大変なんですね。」


「まあ避難者を差し置いて風呂に入るなんて失礼なことはしたくないからな。じゃあ俺はこれで。」


「待ってください!毎朝、私のところに来てくれますか?何かあなたたちが私に用事があるとき、できるだけ年が近い人が来てくれた方がいいんです。」


「…。暇だったらいいが、俺も暇じゃない。避難者の飯を作ったり、任務に行ったり、いろいろ忙しんだ。だから、お前にかまっている暇はない。ただ、飯は必ずお前に届けに行く。その時に心配なことがあったら言ってくれ。ただし、任務前は忙しいから届けられないぞ。」


「分かりました。」


「じゃあな。」


ウェイはテントを出た。


「なんかこういうのドラマでよくあるよな。なんかレスキュー隊に救われた女の子がそのレスキュー隊の隊員に恋しちゃうってやつ。まあ悪くはないんだけどな。」


そんなことを思いながら歩いていると


「お、ウェイ!」


グレートとロトージだ


「お、グレート!それにロトージ!」

「本部報告が終わった。俺たちの任務は完了だ。引き続き別の隊を向かわせて生存者を捜索するらしい。」


「そうか。俺たちはお役御免ってことか。」


「それと、あそこにいたゾンビの血液の採取に成功した。それを解析したところ、なんと遺伝子の配列が今までのゾンビ菌とは違うことが分かった。ベースになってるのはあの花の菌で、それをゲノム編集して作ったのがゾンビ菌らしい。」


「ゲノム編集…?」


「ゲノム編集だ。」


「そんな芸当ができる生物は人間しかいない。」


「そう、つまりこの騒ぎは人為的なものということだ。」


「いったいだれが何のために‥。」


「さあな。あと、もう一つ本部連絡があった。」


「なんだ?」


「このキャンプもいつ攻められるかわからないが、どうしてもキャンプを防衛するのにここにいる隊員たちじゃ足りない。いや、足りるんだが、大勢の生存者を守ることが不可能なんだ。」


「うん。」


「そこでだ。いっそのこと生存者を防衛に使ってしまえばよいと考え、生存者防衛隊を結成することになった。その教官をウェイ、お前にやってもらいたい。」


「え?!」


その言葉に、ウェイが一番驚いた。

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