第8話 スぺシャシードクタルと光的天空

ロシア ヤクーツク


そこに立つ巨大な会社に、一人のアジア系の顔をした男が入る。


「そこに座れ。」

「分かりました。」


その男は椅子に座った。

その前には初老のロシア人が座っている。


その初老のロシア人の名はヨシフ・カーン。


ソ連崩壊前、ソ連の資本主義化に伴い政府と癒着することによって力を持った新興財閥『オリガルヒ』のひとりで、巨大製薬会社スぺシャシードクタルを運営している。


一方のアジア系の顔をした男の名はフー・ミン


中国の巨大航空会社兼兵器会社である光的天空の社長で、その身体能力や顔は軍人に近い。


元々人民解放軍の優秀な軍人であったのだから当たり前だ。


「日本への侵攻は進んでいるか?」

「ええもちろん。東京はもはやゾンビの支配下。ついでに四国にもゾンビを放っておりますから。」

「やはりそなたの作戦は完ぺきじゃのう。」

「ありがとうございます!」


「それで、例の新ウィルスはどれくらい進んでいるのですか?今の食花菌では弱すぎ、まだゾンビは日本人の半分にもなりません。もうすでに自衛隊は動き出しているのですよ。」

「心配ご無用。来い。」

「はっ!」


白衣を着た人物が筒を持ってきた。


その中には緑とも黄色とも取れない液体が入っている。


「この液体の中にあるのが新ウィルスだ。致命傷程度の傷を与えれば一瞬でゾンビ化する。これのほかにもまだ新しいウィルスは作っていてだな。感染力が強かったり、体が変異したり。だが、今のところはこれが平均値のウィルスと言えよう。」


「へえ。」


「試しにネコで実験したが、すごい効き目でね。皆驚いていた。もちろん人間でも実験した。」


「人間?人間でどうやって実験したんですか?」


「簡単だ。支配地域から何人かの人間を連れ出して実験した。」


「なるほど。でも、中国には実験体が大量にいますから、それを使用されてもよろしかったのではないかと。」


「そうか。ならその実験体を貸してもらうか。まあとにかく、ウィルスの使い方は任せた。あとはやっておいてくれ。」


「はっ!」


ペン・グィンは筒を受け取り、袋にしまい込むと、すぐに駆け出した。


「やれやれ。これで計画が一歩進むな。」

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