第23話


 俺は次の日から行動に移した。


 朝起きてランニング。


 食事はプロテインを飲みながらタンパク質を中心にバランスよく。


 夜もどんなに遅くなってもランニング。


 最初は体重が減るだけで筋肉はまだだ。


 そこでジムに入り、トレーニングを加えた。


 それまで無知なりに頑張っていたが、トレーナーに色々アドバイスをもらうと、成果が現れだした。


 正直途中でめげそうにもなった。


 でもその度に売ってしまったナナちゃんを見に行き、モチベーションを上げていた。


 もう香織ちゃんなのかナナちゃんなのか俺の頭の中で分からなくなっていた。


 そのぐらい自分を追い詰めていた。


 体が出来上がっていくと自然に顔にもハリが出てきた気がする。

 食事に気をつけているお陰だろうか。


 俺は頑張った。気が付けば二ヶ月も立っていた。


 俺はいつものように仕事から帰って走りに行った。


 いつものコースを走っていると、遠くに見覚えのある後ろ姿が見えた。


 あれは!



 走る速度を上げて近づくと、やっぱり。


 香織ちゃんだった。


 今しかないと思った俺は勇気を出して声をかけた。



「香織ちゃん!」


 すると、ゆっくりこちらを振り向く。


「小竹‥‥さん?」


 俺はなんて言おうか考えた。


 明るくするのもおかしいし、どうして連絡取れなかったのか聞くのも露骨だ。



「久しぶりだね」


 俺はいたって普通に振る舞った。

 本当は今すぐ抱きしめたい、キスしたい。

 香織ちゃんを見るだけで条件反射のように元気になる俺の俺。



「そうですね」


 香織ちゃんは下を向いている。

 

「元気、だった?」


「はい」


 

 聞きたい事は山ほどあった。



「今少し話出来るかな?」


「はい」



 俺と香織ちゃんはベンチに腰掛ける。



「あのさ、香織ちゃん」


「ごめんなさい!」


「えっ」


「急に音信不通にしてごめんなさい」


「うん、なんでか理由聞かせてくれる?」



 香織ちゃんは言いづらいのか、しばらく黙ったままだった。



 そのままどのくらい経ったのだろう。


 俺は隣に座る香織ちゃんに目を向けると、俯きながらも口元は何か喋ろうとしているようだ。



 香織ちゃんは相変わらず露出の多い服を着ている。


 短いスカートに肩紐の細いキャミソール。


 首元には汗が滲んでいる。


 俺はムクムクっとするのを感じた。


「香織ちゃん、ゆっくり話せそうならどこか場所を移動しようか」


「‥‥はい」



 香織ちゃんは黙って俺の後ろを歩く。


 向かう場所は分かっていたようだ。





 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る