第11話


 翌日会社に行くと、みんな俺を見て驚いていた。



「おい、小竹お前一体何やったんだ?」


「別に何もしてないぞ?佐竹は相変わらず疲れた顔してるな」


 ふんっ、どうだ、今の俺は。


「小竹さん、まるで別人みたいですね」


 山城さんが早速寄ってきた。

 一夜を共にしたからと言って関係が変わるわけでもあるまいし、なんといっても今の俺は見た目では山城さんよりずっと若い。


「ちょっとメンズエステっていうのに行ってるんだよね」


「そうなんですか?最近は男性も美容に気を付けてる人多いですもんね、さすがです」



 なんだなんだ?俺がちょっと若くてハンサムだからってまた期待してるんじゃないだろうな。俺は山城さんのためじゃなくて香織ちゃんの為に10万円もするコースを契約したんだぞ。


 そうだ!香織ちゃんに連絡してみよう。



 小竹です。勉強は進んでるかな?美味しいものでも食べて息抜きでもしよう?



 香織です。いいですね!最近バイトはセーブしてるのでいつでも大丈夫ですよ!


 

 じゃあ早速今晩どうかな?


 大丈夫ですよ!待ち合わせ言ってくれたら行きますよ!


 


 俺は香織ちゃんと約束を交わし、心躍らせて待ち合わせ場所に向かう。


 香織ちゃんどんな反応するんだろう。

 楽しみ!!



「香織ちゃん!」


「え、私ですか?って小竹さん?!」


「そうだよ、気付かなかった?」


「一瞬分からなかったです、どうしたんですか?」


「ちょっと美容に目覚めちゃってね」


「とても素敵ですよ!ビックリしました」


「いやぁ、それほどでもないけどね」


 やはり俺は若ければハンサムで香織ちゃんも頬を赤くしてこちらを見ている。


「じゃあ行こうか」


「はい」


 心なしか香織ちゃんが緊張している。

 可愛い、とてつもなく可愛い。


 俺は今日イタリアンを予約した。


 今の俺たちにピッタリなお洒落な店だ。


 香織ちゃんは終始俺の顔に見惚れていた。


 10万は痛いが、こんなにも効果があるなら契約してよかったな。


 食事も終盤に差し掛かった頃、香織ちゃんが俺に言ってきた。


「この後ってどうします?」


「え、あ、香織ちゃんはどうしたい?」


「私は‥‥小竹さんにお任せします」


 恥ずかしそうにそう言う香織ちゃんを見て俺は確信した、今日はいける。


「じゃあゆっくり出来る場所行こうか」


「はい」



 香織ちゃんは俺の少し斜め後ろをついてくる。


 緊張してるのかな?可愛いなぁ。俺はもうすでに体が熱くなっていた。



「こうゆう場所は初めて?」


「はい、なんだか緊張しますね」


 香織ちゃんはどこかソワソワしている。

 

 人の目が気になるのかな?俺はささっと香織ちゃんの手を引いて部屋に入る。


 繋いだ手から香織ちゃんも熱くなっているのを感じた俺は、鼓動が速くなっていた。




 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る