第3話
俺はあの子の笑顔が忘れられずにいた。
「おい小竹、お前遅刻しといて何ニヤニヤしてんだよ」
こいつは同期の佐竹、といっても一応ここの部長だ。
「あぁ悪い、ちょっと考え事してて」
「そんなんだからいつまでも平なんだよ〜」
こいつは平気で俺の心の痛い所を突いてくる。
俺は考えていた、あの子の笑顔がもう一度見たい。
もう恋はしないと思っていた俺は次の日からあの子を探す事にした。
同じ電車に乗っていたという事は会える可能性は十分にある。
しかし、そう簡単に会えるはずもなく、半ば諦めかけていた頃、営業先からの帰りに寄ったコンビニでなんと会えたのだ。
どうやらバイトをしているらしく、話しかけてみる。
コーヒーを一つ手に取りレジに向かう。
「いらっしゃいませ」
「あの、俺の事覚えてますか?」
「すいません分からないです」
「えっと、先週電車で‥‥」
そこまで言うと気付いた様子だ。
「あ!あの時の!」
するとまたあの笑顔を見せてくれた。
「よかった思い出してくれて」
「職場はこの辺なんですか?」
「そうなんですよ、すぐそこのビルです」
「じゃあまた会えますね」
なんてこの子は可愛らしいんだ。
俺は見惚れていた。
「早くしろよおっさん!」
後ろから感じの悪い若い女が言ってきた。
「あ、すいません」
「じゃあまた」
その子は小声で俺に囁いてくれた。
同じ年頃でもあぁも違うものか。
俺はますますその子の事が気に入った。
あっ、名前を聞くのを忘れてた。
また次会った時に聞けばいっか。
俺はルンルンで会社に戻る。
「おい小竹〜今日付き合えよ」
佐竹が言ってきた。
「今日は無理だよ」
「なんだ?どうせする事ないだろ?彼女でも出来たのか?」
「違うけど、もうすぐ出来そうなんだよ」
「物好きもいるんだな〜」
こいつ本当に嫌いだ。
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