第4話 スポーツジム / 筋力トレーニング
スポーツジム通いは「強靭で柔軟な心身作り」に効果があるのでしょうか?
2001年1月中頃の水曜日午後7時頃に 私は 意を決して 自宅近くのスポーツジムを訪れました。
交通事故の後遺症に悩まされ この1年間 いろいろな病院を訪ね それぞれの診療を受けてきた私は 治療だけに頼っていては 元の体には戻らないと感じていました。
私は 後遺症を治すには自ら動いて体を変える取り組みが必要だと思いスポーツジムを訪れました。
スポーツジムの扉を開けて 受付へ行き 女性のスタッフに 入会の希望を伝えると 彼女は「そちらへどうぞ。」と言って 受付に隣接するカウンター席へ案内しました。
30歳中頃、中背、細身の彼女は カウンター越しに 私に施設のパンフレットを手渡すと「こちらでご提供しています会員種別をご紹介します。」と言ってそこに記載されている内容を説明しました。
彼女は スポーツジムには マシーンジムとスタジオとプールの施設があり 会員種別により利用できる施設と時間帯が決められていると言い「お客様のご希望に合わせてご利用いただけます。」と言いました。
私は 平日の午後8時から11時まで利用できる会員種別を申し込み マシーンジムを利用することにしました。
翌日の会社帰りに 私は スポーツジムに寄り 受付で会員証を提示すると 受付の女性スタッフは ロッカーキーとトレーニングノートを渡しました。
私は ロッカーでTシャツとトレーニングパンツに着換え 室内靴に履き替えて マシーンジムへ向かうと 女性スタッフに「入門プログラムを受けたいのですが。」と言いました。
ジムでは 初心者を対象とした入門プログラムが用意されていて 私は 事前に申し込んでいました。
30歳頃、中肉中背の女性スタッフは 笑顔で「はい 承っております。こちらへどうぞ。」と言うと ジムの一角に設置された血圧計の所へ案内しました。
入門プログラムは 血圧測定に始まり ビデオを見ながらストレッチを行い その後マシーンを使った筋力トレーニングを行い 最後に ストレッチを行うものでした。
マシーンを使った筋力トレーニングは 主に体の太い筋肉である腹筋や背筋や大腿筋や上腕筋を動かすものでした。
スタッフは「トレーニングの目的に応じて マシーンのウエイトを設定しましょう。」と言いました。
彼女は 筋繊維を太くし最大筋力をアップするには 速筋を鍛える必要があると言い 8回から10回をこなせる程度の重いウエイトを設定し 2日から3日毎に トレーニングを続けることを推奨しました。
持久力を高めるためには 遅筋を鍛える必要があると言い 15回から30回をこなせる程度のウエイトを設定し 2日から3日毎に トレーニングを続けることを推奨しました。
私は やせ細った自分の右足を見ながら 筋繊維を太くし最大筋力をアップするためのウエイトトレーニングを始めることにしました。
私は スタッフの指導の下 マシーン毎に 自分の筋力に合ったウエイトを選択し それをトレーニングノートに記入していきました。
最後に ストレッチエリアで ビデを見ながらストレッチを行い この日のトレーニングを終えました。
翌週の月曜日の午後8時頃に 私は スポーツジムを訪れました。
前回のトレーニングで 肩周りと足腰に張りを感じていましたが 前回と同じメニューをこなしているうちに 張りは解れていきました。
最後のストレッチが終わると 私は 試しに腕立て伏せと腹筋をやってみました。
交通事故後に出来なくなっていた腕立て伏せと腹筋は それぞれ3回と1回だけなんとかできました。
昨日までできなかったことが今日できるようになったことに 私は嬉しくなり トレーニングを続けていけば きっと 強靭で柔軟な体になり 元の様に普通に生活できるだろうと思いました。
私は 週に3回 スポーツジムを訪れ マシーンを使った 腹筋 背筋 大腿筋 上腕筋 のトレーニングを続けました。
それぞれのマシーンで 設定したウエイトを10回を1セットに 3セットをこなせるようになったら 次回からウエイトをアップするようにして 筋肉に負荷を掛けるトレーニングを続けました。
トレーニングを始めて 1ヶ月後に 私は 膝と腰に普段よりやや強い痛みを感じるようになりました。
背筋に負荷のかかるベンチプレスをやると 腰痛が生じ 大腿筋に負荷のかかるレッグプレスをやると膝に痛みを覚えました。
腰や膝は 私に「無理してはいけませんよ!」と忠告しているようでした。
でも 私は 入院中に理学療法士の言葉「痛くても動かさないと 動けなくなりますよ。」を思い出して 多少痛くてもトレーニングを続けることにしました。
それでも 膝と腰の痛みが酷くなると ウエイトを減らすか トレーニングを中止して その後 膝と腰の痛みの程度が和らぐと ウエイトトレーニングを再会しました。
ウエイトトレーニングを始めて半年経った頃に 私は 今のような筋力トレーニングのやり方は 自分には合っていないと思うようになりました。
入院生活でやせた筋肉や弱体化した筋力を回復させるために 体の中の太い筋肉を鍛えることを目的としたトレーニングを中心に行ってきましたが それは周期的に腰痛や膝痛を引き起しました。
そのためにトレーニングは断続的なものとなり 私の目指す「強靭で柔軟な心身作り」の取り組みは 一歩進んで一歩後退する状況を繰り返しました。
私は これまでのトレーニングと腰痛や膝痛との関係を振り返りました。
筋力をアップするウエイトトレーニングは 筋肉に強い負荷を与えるもので 負荷に対抗して筋肉が収縮する時に 筋繊維が切れて 切れた繊維が修復される時に より太い筋肉を形成するものでした。
一方で ウエイトトレーニングは 切れた筋繊維が修復される時に 痛みの元になる乳酸等の成分が発生することにより 筋肉痛や凝りの症状も伴いました。
凝りは 収縮した筋肉中に痛み成分が取り込まれて硬くなった状態であり それは 体の柔軟性を無くすものでした。
凝りを解すと 中にある痛み成分が放出され 神経を刺激して 痛みとして感じさせ 痛みを感じると その周りの筋肉が収縮し 更に凝りを作るという悪循環に陥いっていると思われました。
自身の現状を振り返った私は 腰痛や膝痛の症状を改善しつつ 強靭で柔軟な体を作るためには ウエイトトレーニングに加えて 柔軟性を付与するトレーニングが必要だと考えました。
私は ウエイトトレーニング後のストレッチに重点を置くことにしました。
これまで ウエイトトレーニング後に 5分間のストレッチを行っていましたが 今後は 20分間掛けて 足首や膝回りや股関節回りや肩周りを入念に伸ばすようにしました。
ストレッチに重点を置いたトレーニングを始めて 2ヶ月程すると それまでのように腰痛や膝痛に悩まされることは少なくなりました。
痛みが少なくなると 徐々に ウエイトを上げてトレーニングを行うことができるようになり 半年くらいすると トレーニングを始めた時と比べて 少し力がついてきたと感じました。
力がつくと より体が硬くなるので その分 ウエイトトレーニング後のストレッチも時間を掛けて入念に行うようにしました。
ストレッチに重点を置いたトレーニングを続けていると 少しずつ体が伸びて柔らかくなるのを感じましたが あるところから それ以上は体が伸びないことに気付きました。
マットの上に足を伸ばした状態で座って行う前屈や 左右への上体ひねりや 開脚や マットに腹ばいになって行う上体そらしの動きでは あるとことで体がロックしたようになり それ以上に伸ばすことができなくなりました。
体がロックするのは 股関節周りや膝関節周りの動きが悪くなっていることによるものでした。
私の足腰の関節周りは まるで 眠っていて仕事をすることを忘れてしまっているかのようでした。
理学療法士の言葉「動かさないと 動けなくなる。」を思い出した私は 危機感を感じて 現状分析を行い対策を立てることにしました。
この半年間のウエイトトレーニングとストレッチの取り組みを行ったものの 期待した成果は得られていませんでした。
成果が得られなかった原因は 腰周りや膝周りの痛みと凝りの悪循環により形成された関節周りの硬さを改善できなかったことでした。
課題解決には 何か これまでとは違う取り組みが必要であり それは 凝りや固くなった関節周りを柔軟にする何かでした。
私は 硬いものを柔らかくするには 一般的に 熱と衝撃を加えることが効果があると考えました。
技術系の仕事に従事していた私は 有機物でも無機物でも 温度を上げていくと柔らかくなり 特に軟化点を持つものは ある温度で急激に柔らかくなることを知っていました。
交通事故による腰椎の圧迫骨折の経験から 硬い骨でも 強い衝撃力が加わると軟化することも知っていました。
私は 凝りと関節周りを軟化させるために それらを温めて衝撃力を与えることを方針としました。
課題解決のための具体的な取り組みとして スポーツジムのいろいろなスタジオプログラムを受けることにしました。
スタジオプログラムには エアロビクスや格闘技系エクササイズやヨーガ等がありました。
私は それらのスタジオプログラムを1つずつ受けて それらのエクササイズが自分の腰痛や膝痛にどのように作用するのかを確かめることにしました。
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