第四章  カレン・テイラーの真の狙いは

第31話   ベンジャミンお兄様からの手紙

僕の妹 ダリアへ


本当は、もっと早く、そしてたくさんお手紙を出すべきだったんだろう。今、勇気を振り絞って、お父様に内緒でこの手紙を書いているんだ。


手紙自体書き慣れていないから、変なところがあったらごめんよ。


僕が筆を取ったのは、君にお礼が言いたかったからなんだ。カレン様の件なんだけど、本当に助かったよ!!


ありがとう!!


僕は人の多いところが苦手で、カレン様のサロンには二回しか行ったことがなかったんだ。それも、五年も前のことだ。それなのに、彼女が僕目当てに押し掛けてきたのは本当に怖かった。彼女が嘘をついているのが、ひしひしと伝わってきて、彼女と一緒にいるだけで、僕はとても傷ついてきたんだ。


でも、僕のほうが身分が低くて、彼女の誘いを断れず、別荘を訪問するときは、いつも胃が痛かった。


それが、ある日、苦痛から解放された!


僕は君を、誤解していたようだ。


他人の心の中を何でも見通して、それを歌詞にして、からかうように大声で歌い上げる、とても意地悪な女の子だと聞いていたから、僕は怖くて君に会おうとも思わなかった。


カレン様と馬車に乗って、君のお屋敷に向かっているときは、僕やカレン様の本心が、君の口から歌となって出てくるんじゃないかと心配で心配で、ストレスで吐血しそうだった。


けれど、君は僕を助けてくれたね。あの一時いっときしか一緒にいられなかったけれど、君が優しくて勇敢な女の子であることが、伝わってきたよ。


そんな君が、どうして森の奥の屋敷に閉じ込められているのか、まだ詳しく調べられていないけれど、いつか僕らと同じ屋敷で生活できる日が来ることを、微力ながらお手伝いしたい。


手紙でしか、まともなことが言えなくて、本当に申し訳ない。胃痛のあまりに何も挨拶ができないまま、君の屋敷を後にしてしまったことを、とても後悔している。


頼りない僕だけど、君の味方でいさせてほしい。また手紙を送るよ。優しい君が孤立しているなんて、おかしいことだと思うから。


これからも、君の味方でいられるよう、頑張るよ。


長々と書いちゃってごめん。それでは、この辺で切り上げるよ。またね。



君の兄 ベンジャミン・デイドリーム


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