第2話 平凡な僕
僕は絵を描くことだけが取り柄の、冴えない高校生だ。それ以外になんの特技もないし、面白みもない。友達もいないし、頭も良くないし、運動もできない。ほんとにそこら辺にいるただの高校生だ。だが、学校での僕のあだ名は「変質者」だった。クラスの男子も女子も先生も、僕を物珍しい目か嫌悪の眼差しで見ていた。僕はあまり気にしていなかったが。だって僕には言われても仕方ない、悪い癖があったからだ。僕は絵を描くことだけが取り柄だ。そして美しいものが好きだ。美しいものを描くのも。小さい頃から美術館が好きだったし、造形美なんてものを追求しがちだった。だから、人間のこともそういう、絵のモデルとしてしか見れなかった。人と話していても、その人の顔の造形なんかを分析してしまうし、体型が極端な人は見ているだけでも不快だったので避けていた。その逆に、美しい、というか顔が整ってる人にしょっちゅう声をかけていた。それが僕の悪い癖だった。基本的に人を絵のモデルとして見ていた。だから、モデルとして描きたいと興味が湧いた人は学年、クラス、先生、性別関係なく声をかけていた。まあ、その姿は公園で遊んでいる幼児に話しかける変質者のそれに酷似していたのだろう。高校に入学して半年で、僕のあだ名は「変質者」となった。時には生徒指導にきつく注意されたり、親が呼び出されたり、学校のカウンセリングを受けたこともあった。が、あんな手や、こんな手を尽くしても僕の悪い癖は治らなかった。そうして先生たちや親が頭を悩ませた頃、僕は県が開催する美術コンテストで、審査員賞を受状した。それが効いたのかそれ以来、先生たちは作品作りの為だから、と僕の問題行動を止める事を止めた。それが僕の癖に拍車をかけた。そうして僕は何人もの人に声をかけて、時には万単位のお金を払ったり、お昼ご飯やお菓子をおごったりしながら、モデルをやってもらい、スケッチを続けた。そんな事をしている時に見つけたのが、彼女、⦅春陽⦆だった。
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