列島郵便屋さん

 少し風が強くなったのを感じ、ヨットの船体をフラットに保つために、帆を張った方とは反対向きに海に乗り出すようにして体重をかける。

 そうして島と島の間を進んで目的の島が視界に映ると、急に喉が渇いて喉を鳴らした。

 この街は、1488の小さな島からなる列島という珍しい形で存在し、島々にヨットで郵便物を届けるのが僕の仕事だ。

 桟橋にヨットを係留すると、萌葱色の屋根の家の前に立った僕は一つ咳ばらいをした。

 呼び鈴を鳴らそうと手を伸ばしかけたところ、急に開いたドアに驚いて素っ頓狂な声が出てしまう。

「ごめん。窓から見えたからさ。あ、私宛じゃん。差出人の名前がない、誰からだろう」

「僕だよ」

「なによ、わざわざ手紙なんて──」

「まぁ、いいじゃん。まだ仕事あるから、じゃ。とにかく読んで」

 素早く立ち去ろうと急いで帆を広げた勢いで海に落ちてしまう。

 海から顔を出すと、潮風の先で彼女がこちらを見つめていた。

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