イケてるお兄さん
流行ファッション誌「エ・パリジャネェノ」の六月号の表紙を飾るための撮影会を終えた帰り道のことだ。
「あっ!誘拐犯だ!」
母親に手を引かれた少年が、僕の顔を指さして言った。
「こらっ!人様に向かって何て失礼なことを言うの」
「だって、杉ノ下左京が誘拐犯だって言ってたもん」
母親は、いい加減になさいと言って、少年の頭を抑えつけた。
子供ってのは何でもお見通しなんだな。
「良いんですよ。演じた役を覚えてもらえるのは役者冥利につきますから」
そう言って僕は、変装用のサングラスとマスクを外して見せると、母親が少し顔を赤らめたのが分かった。
「もしかして、俳優の──」
「はい、池面蔵です」
母親にサインを書いてあげた後、山奥の別荘に向かうべく、愛車の運転席に乗り込んだ。
「んんっ、んーんっ…」
後部座席から布越しに声が漏れ聞こえてきたので、声を掛けてあげよう。
「少し黙ろうか。命は大切にしないとね」
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