茄子紺の旗

 茄子紺色の旗が見える。

 勇樹がそれを一生懸命に振っていた。

 俺は、襷をきつく握ると、乾いた音と共に駆け出した。


 苦しくて苦しくて、僕は首を振る。

 視界の端で勇樹が何か叫んでるけど、聞こえない。

 それでも、茄子紺の旗から伝わる風に背中を押されるようにして襷を前に出した。


 襷を受け取る少し前に、勇樹が振ってる茄子紺の旗に白い文字が見えた。

”走れ!!”

 まかせろ、必ずお前に繋いでやる。


 色褪せていたはずの襷が皆の汗で色濃くなり、あの旗と同じ茄子紺色に染まっている。

 その襷をアンカーである勇樹の肩にかけてやると、泣き崩した顔の勇樹が車椅子のハンドリムに手をかけようとしたので、それを制止する。

 いいんだ、ありがとう、勇樹。


 アンカーは助っ人に頼んだはずなのに──。

 僕の涙と皆の汗が混じり合った襷を握りしめると、地面にしみを作った。

 そのしみに重なった四つの影を辿ると、清々しい笑顔があった。

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