友人飛行

 敵機殲滅を掲げる我が海軍航空隊には、友人飛行という名の作戦がある。

 それは小隊で行うもので、逃げて散り散りになった敵機や隊からはぐれた敵機を確実に落とすために行われた。

 戦闘機の塗装を敵機と同様に塗り、群れからはぐれた一匹狼に近づき、友軍だと油断したところを撃ち落とすのだ。

 戦闘機の形など違うところが多々あるが、直前に味方が撃たれた焦りと安心をいち早く求める搭乗員の心理からか、こちらの正体に気づくことは少なかった。

 今、俺の横にも安堵の息を漏らしているであろう敵機の姿があった。

 その敵機を守ろうとするように左右と後ろ、それから少し離れた上方を位置取った形になる。

 次の瞬間、後方の機が機銃を放つと、敵機は煙を上げて海に落ちていった。

 それを見て、俺は何も思わなかった。


 数日後、俺は友人飛行作戦中に撃たれ、死んだ。

 俺を撃ったあれが味方だったのか敵だったのか、それすらも分からなかった。

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