サルジオ・ヘンダーソン

 私は勢いよく局長室の扉を開く。

「局長、サルジオが脱走しました。」

「なに?すぐ捜索隊を出せ!いいか、今すぐだ!」


「サルジオについて、日本での目撃情報です。坂に垂直に立つ奇妙な外国人男性、間違いないかと。」

「奇怪なことをする。投薬の副作用だな。突然泣いたり厄介だ。実験が世間にバレるのはまずい、早急な確保を。」


「情報のあった関東を中心に掲示板での捜索も始めました。」

「早くしろ!アレが唯一の成功体なんだ。」


「ついにサルジオを──。」

「よくやった!よし!」

「それが、頭部の損傷が激しく、脳の回収すらできませんでした。」

「...なんだと?」

「丘から飛び降りたようです。規定に則り遺体は抹消しました。」

 嘘だった。

 そもそもサルジオを脱走させたのは私だった。

 局は、成果皆無で間もなく閉鎖。

 そうなれば、貴方は自由よ。

 生きるのよ。

 貴方なら失った時を、青春を、きっと取り戻せるわ。

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