重石ヘンダーソン

 俺たちの高ぶる気持ちに合わせるようにして砂浜の熱が足の裏から伝わってくる。

 その熱を払うように、号令に合わせて砂浜を駆け出す。

 俺たち松前海浜高校野球部一行は、最後の夏の大会前に行う我が部の伝統行事を行っていた。

 その名も「浜かけ」という。

 浜を駆け、重石様に願を懸け、最後には円陣を組んで声を張り上げる、それが「浜かけ」だ。

 重石様ってのは、浜辺の先にある大きな石のことで、不思議な力があるとされ、市の文化遺産にもなっている。

 そんな重石様に祈祷し、円陣を組むべく再び砂浜を駆けようとした時、重石様の影に男の姿を捉えた。

 彼は背が高く、ダーティブロンドの髪と眉の下の青い瞳で遠くを見つめて立っている──それも自分の頭を抱え続けて。

 満身創痍といった様子だったが、しばらくして彼は丘の方へと歩いて行ってしまった。


 士気を高め、心を一つにした俺たちは、栄冠に手を伸ばそうと、特別な舞台へと駆け出した。

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