涙腺ヘンダーソン

 私は、友人達と遊ぶためにバスを待っていた。

 いつもの五人──じゃなくて四人で、話題の映画を見に行こうとの事だった。

 待ちぼうけていると、道路の向こうに男の人が見えた。

 彼は背が高く、ダーティブロンドの髪と眉の下の青い瞳で遠くを見つめて立っている──それも涙を流しながら。

 その涙は止まない。

 バスに乗っても彼から目が離せなかった。


 集合場所のガゼボに着くと、皆揃っていた。

 彼女も含めて。

「なんで夏姫なつきがここにいるのよ。」

「それはウチの台詞なんだけど。あんた達騙したって訳?」

 友人達はガゼボを囲んで私たちの退路を塞ぐ。

 どうやら彼女達が仕組んだみたい。

「そうゆうこと──。」

 それからは酷かった。

 私と夏姫は、泣きじゃくりながら拙い言葉を繰り出して思いをぶつけ合った。

 涙も枯れる頃、何だかおかしくなって私たちは笑っていた。

 バス停での出来事が脳裏を過った。

 あの彼もいつか笑えるのだろうか。

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