坂道ヘンダーソン

 俺が通う高校へ続く坂道、朝夕は学生で賑わう。

 その中、明らかにうちの学生ではない男が紛れている。

 彼は背が高く、ダーティブロンドの髪と眉の下の青い瞳で遠くを見つめて立っている──それも坂道に対して垂直に。

 シュールだ。

 斜面に垂直に立つのは案外難しい、長時間となると尚更に。

 だが、彼は毎日2時間、時間帯を問わずそこに立っているらしい。

 まったく理解できない。

 彼を横目に歩いていると、透き通った声が飛んでくる。

「おはよう、孝太さん。」

 楓ちゃんだ。

 向けられた笑顔に少しドキッとした。


 2ヶ月もすると彼は坂道に現れなくなっていた。

 ふと彼がいた場所に立ってみる。

 しばらくすると、建物と山と道とガードレールで形作られた「ハート」が見えた。

「驚いたな...。」

 唖然としていると、突然ハートの中に人が飛び込んできた。

「なーにしてるの?」

 いけない、不意打ちだ。

 俺のハートは撃ち抜かれていた。

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