第6話団結力
「いや~、森さん。私は警察に出頭しようと思ってる。後は、森さん中心にこの酒蔵を守ってくれないか?」
「何をおっしゃいます。あの方が多角経営に手を出して、ここをスーパーにしようとしていた。私はもう、50年ここで杜氏として働いています。六代目の気持ちは分かっています。私たちを守ろうとしてあいつを……六代目、私たちに任せてもらえないでしょうか?」
「……ありがとう森さん」
黒井川警部は六代目を探していた。
すると、事務員の女の子を見付け声を掛けた。
「すまないけど、六代目どこにいる?」
「社長室だと思います」
黒井川は礼を言って社長室のドアをノックした。
コンコン
「はいどうぞ」
中から声がした。
「中村さん、今日はお話があります。あんまり、いい話しじゃないです」
「まぁ、黒井川さんそちらへお座り下さい」
「話しを聞きましょうか?」
「亡くなった弟さん、体内から睡眠薬が検出されました。何者かがお酒に睡眠薬をいれたんです。これは殺人です」
「信じられない。昨日通夜で秀樹の顔をみると微笑んでいるみたいでした。それが殺人となると、穏やかじゃないですね」
黒井川はにこやかな顔で、
「中村さん、先週の土曜日の昼どちらにいらっしゃいましたか?」
「先週ねぇ……この部屋にいました。新酒の計画を練っていました、この前も言いましたよね?」
「そうですね。では、失礼します」
黒井川はさっきの事務員に尋ねた。
「六代目、先週土曜日どこにいた?」
「社長室です」
「顔見た?」
「はい、昼の3時にお茶を持っていきました」
「あ、そう。ありがとう」
大桜酒造から現場までは車で片道50分である。六代目が犯人だとすれば、どうやって現場から立ち去ったのか?きっと、道具があったに違いない。
しかも、アリバイもある。
黒井川は喫煙所でタバコを吸いながら、頭を掻いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます