第6話 勝負服

「ちーとっせちゃーん、あっそびっにいっきましょー」


今日は水族館へ行く日。

ちとせんちのインターホンを鳴らしたアタシは、ちとせに呼びかける。


「はーい!葵ちゃんおはよう!中入って待ってて!」

「わかった、待ってるう」


玄関ドアを開けると、ちょうど出かけようとしているりっくんがいた。


「あれ、りっくんお出かけ?」


ん?りっくんが固まったままアタシを見ている。


「どうしたお前、その格好」

「は?あ、あーはいはい、そゆこと?」


アタシの姿に驚いてたのね。

そう、今日はアタシ、女を封印したの。

だって、あの男とは夜の蝶で会ってるし、気づかれない方がいいかなー?って。

ま、アタシのことなんてどーせおぼえてないでしょーけど?


「……まあ、察して?」

「おう、そうか。よく分からんが、分かった」


そう言うと、すれ違いざま、アタシの肩にポンと手を置くりっくん。


「ちとせのこと頼んだ。男と付き合うのは構わんが、ろくでもない奴なら話は別だ」

「……ぶっ!!!わ、わかってるよ!任せとけ!」


たまに見せる妹想いの顔に、思わず吹き出しちゃう。

……ほんとりっくん、いいなぁ。


「じゃ、楽しんでこいよ」


そう言って、りっくんは出かけてしまった。

あ、どこ行くのか聞きそびれちゃったなあ。


りっくんを見送って、アタシはそのまま玄関に腰かけてちとせを待っていた。

靴脱ぐのめんどくせー、という理由で。


「葵ちゃんお待たせ!夕飯の仕込みだけやってたら、ちょっと時間かかっちゃった、ごめんね」

「んにゃ、大丈夫。むしろ、オシャレに時間かかっちゃったーって言われなくてほっとしてる」


ん?と言った顔のちとせ。

わかんなくてもいーよ!と言って、アタシ……いや俺は立ち上がった。


「じゃあ、行くか」

「う……………ん?あれ、葵ちゃんが、葵くんになってる!!!」


気づくのおそ!!!


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