第5話 家族団欒

「いただきまーす!」


ブリパーティが始まった。

見渡す限りブリ、ぶり、鰤。


「まともなご飯が久しぶりすぎて……泣けるぅ……」


料理するくらいなら金で解決するがモットーのアタシでも、こういう手作りご飯は恋しい。

しかも、アタシのために作ってくれてるとか……もうグッときちゃう。


「なんだ、食事くらいいつでも来いよ」

「そうだよ、葵ちゃんはもう、うちの子みたいなもんなんだから!」

「りっくん……ちとせ……ううっ……ちょっと今から養子縁組の手続きしてくるわ……」

「アホか。ほら、とっとと食え」


いやアタシは本気よ、なんなら入籍届でもいいんだけど。


なんて感じで楽しい時間はあっという間に過ぎ、もう食べられない……と幸せな苦しみを味わっていた。


「そういやりっくん知ってる?ちとせったら、アタシというものがいながら、男と遊園地なんか行ってんのよ!もー信じらんない」

「何言ってんだ、そんなのちとせの自由だろ。つか、いくつだと思ってんだ、23だぞ?男の1人や2人くらいいたっておかしくないだろ」

「ちょっとやめてよ葵ちゃんもお兄ちゃんも!全然そんなんじゃないんだから。お友達なんだって」


いや、あいつはお友達だなんて思ってないわよ……。


「俺ぁ、早く孫の顔が見てえなあ」

「ジジイか!」


りっくんのボケなのか本気なのか分からない発言に、思わずツッコミを入れてしまう。


「もう……本当にそんなんじゃないのに……私そういう願望まったくないもの……」

「んー、でも相手がどう思ってるかはわかんないでしょ。情に絆されて、なんて……やだアタシお姉さんとか呼ばれたくないわよ!」

「お兄さんな」


と、そこで誰かのスマホからの通知音が響いた。


「あ、篝さんからLINEだ」

「なぬ!」


どうやらあの男からのLINEが来たようだ。


「あ、ねえ、葵ちゃん、篝さんがね、お友達も一緒にどうですか?って」


そう言いながら、ちとせがスマホ画面を見せてきた。

そこには、水族館の招待チケットが3枚写っていた。


「お仕事で、チケットをもらったからって……どうする?」


長考の末、アタシは決めた。


「……受けて立とうじゃないの、喜んでって返事しといてちょうだい!」

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