第2章 友達の友達はライバル
第1話 夜の蝶
「……って感じで、本当に、久しぶりにはしゃいじゃった!」
アタシこと石田葵の携帯からは、楽しそうに最近の出来事を話すちとせの声が聞こえてくる。
その楽しそうな様子に、思わず手元のぬいぐるみを締め上げる。
高校からの親友ちとせとは、なかなか会って遊べない分、よく電話する。
今日も楽しくガールズトーク、と思っていたアタシは、信じられない話を聞き、愕然とした。
出会ったばかりの男と?
2人きりで?
お出かけ?
なんてこと!!!
どうやら、ちとせと昔会ったことのある男らしいが、ちとせにはおぼえがないって……そんなの怪しすぎない!?もう会うのやめなさいよ!!!
……と思ったのに、あまりに楽しそうに話すちとせに、あまりキツい事も言えず悶々としている。
せめてどんな奴かだけでも見せなさい!写真送りなさいよ!と言うと、大事な親友の頼みだし、本人に聞いてオッケーだったら送るね、との事。
「遊園地でもなんでも、休みちゃんとアンタに合わせてアタシが付き合ってあげるから!どこの誰かも分からないような男にほいほいついていかないように!!!わかった!?」
そう念押しして通話を終えた。
でも、あの子は、仕事が不規則なアタシに気ぃつかって、自分から誘ったりしないんだよなぁ……優しいやつ。
そして、30分後、ちとせから例の男の写真が送られてきて、私は腰を抜かしそうになった。
「こいつ……うちの店の客じゃん!!!」
アタシが働くキャバクラ「夜の蝶」、そこによく来る社長がたまに連れてくる男、そいつがその写真におさまっているじゃないの。
アタシは何回か、ヘルプとしてつくくらいだったけど、やたらと美形だからすぐおぼえちゃったのよね。
連れてこられてるとはいえ、キャバクラに来るような男がちとせに近づくとは……許せない……ぐぬぬ。
力任せに締め上げているぬいぐるみの首は、今にももげそうだ。
はっ!いけない!これはちとせからもらった大切な子だ……あわててごめんごめんと撫でた。
ああ、これはどうしたもんかしら……。
そう思い悩みつつも、仕事は待ってくれない。重い腰を上げて、アタシは夜の蝶へと出勤した。
ちょうどいいところに社長から指名をもらってる子がいたので、それとなくあの厄介なイケメンについて聞いてみた。
「ああ、あのすっごくカッコいい人?確か、社長さんの会社からよくお仕事もらってるとか言ってたけれど……アイちゃんまさか、彼に惚れちゃった?だめよぉ、あの人社長のお気に入りだから、うちの店のキャストが手を出したなんてバレたら大変よ」
「もおー、惚れたとかそんなんじゃないわよ!」
ありえない!全力で否定!
「実は、アタシの友人が、最近仲良くなったって男の写真見せてくれたんだけど、なんとあのイケメンだったのよ!
夜遊び上手な男なんて、近づいてほしくないのよ……だから何か起きる前に潰しておかなきゃでしよ?そういう理由」
「やだあ、そうなの?でも、くれぐれも物騒な事はやめてよねえ。社長さんの機嫌損ねて来てくれなくなったら泣いちゃう」
そう言って彼女は、さぁお仕事お仕事、と去ってしまった。
「あ、そうだ、今日あの社長さん来そうよ?もしかしたら、あの彼も、連れてくるんじゃない?」
「まっ、それ本当!?」
あらあら、今日はとっても楽しい一日になりそうじゃないの……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます