第10話 僕の価値観、私の価値観
「私は……かわ……かわ……かわいくはないけど……かわいくなれるように頑張ります……」
そう言うので精一杯だった。
かがりさんは、うーん、と首をかしげたものの
「及第点ということで」
と私の手を解放してくれた。
「ひとつ、言いたい」
かがりさんは真剣な顔で、私に言った。
「たとえ世界の価値観が、あなたを可愛くないと思っても、僕の価値観はあなたを可愛いと思うんです。それだけは信じてほしい」
「……」
何も言えず、ただ頷く事しかできなかった。
それから、しばらく無言のまま時だけが過ぎた。
先に口を開いたのは、かがりさんだった。
「ごめんなさい、せっかく楽しい時間をと思ったのに……僕は少し言い過ぎる」
「いえ……私も、自分の価値観を押し付けるだけだって、気付かされました……いい年してもまだ学ぶことってありますね」
そして2人で、ぷっと吹き出してしまう。
「……ちゅ、注文しましょ!せっかくの初デート、楽しまないと!」
思わず初デートを肯定してしまい、しまった!と思ったものの、かがりさんが嬉しそうに笑ったので、まあいっか、と思う事にした。
注文票を書き終え、店員さんに渡したので、早速ドリンクバーへ向かう事にした。
「かがりさんは何飲みます?取ってきますよ?」
と言いながら席を立とうとすると、いや僕が!と慌てて立ち上がるかがりさん。
「あ……こういう時って、男性に持ってきてもらうものですかね?」
「まあ、僕としては、やってあげたいものです」
「うーん、でも私は……そうだ、じゃあ一緒に取りにいきましょ」
「そうですね」
その時なんだか、やっと普通の友達として始まったような気がして、そんな自分に少し笑った。
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