第6話 師匠はカミツキガメ 202204100700
「ようこそ、国境街へ。
来る者、去る者、どちらも拒まず。
生きていられるかは自己責任。
くれぐれも街の死体置き場を増やさないように願っているよ。」
「それはお前さんの言いたいことだろう。それにいつも言ってるだろう。俺は死んだときはそれまでの人間だってことさ。」
「今日はラグナロクと、パスポートの更新か。
入って良し。」
ラグナロク?
聴き慣れない言葉に首(スライムに首なんて器官は存在しない。)を傾げる。
「別名、命の賭博場。
どこの国にも似たような施設はあるが、この施設は狂ってるぜ。
年齢制限、種族制限共になし。
武器、アイテムなんでもござれ、勝てば賞金と名誉、場合によっては国の士官まで行える場所さ。」
「スラスラ(納得)。」
へえ、そこの常連なんですかレオン君は。
もしかして、今まで手加減してくれてます?
だとしたらとんでもないくらい強い人に教わってるんじゃ。
「行けば分かる。」
門から入るなり、熱気のような気圧されるような感覚が広がった。
「強者から弱者になった気分はどうだ?」
「スラ?」
周りにいる人間はさっきの奴らとは比べ物にならないくらい強い。
かつて自分を見逃していた冒険者が児戯に思える風格を感じていた。
反して女子どもが見ない。
訂正、女の格好をした男っぽい人は居る。
子どもはレオンしかいない。
「また、カミツキガメが来たな。」
「ラグナロクの大穴。
今日のオッズは見ものだ。」
カミツキガメとはレオンのことだろうか。
あの姉に対しての良いようはカミツキガメそのものだが。
群れに居た時に食したことがあったが、それはそれはたいそう美味なものであった。
でも、その分凶暴で、合体スライム身体の一部をものともせずに食らいつく強靭な顎を持っていた。
美味な反面。その利益に見合っているかと言われれば、スライムとしては見合っていないものだった。
そもそも、自分よりも凶暴なモンスターに対しても何度も嚙みつく習性があるので、敬遠されがちな餌ではある。
レオンはカミツキガメ、弱くはあるが厄介な敵であることは確かな渾名と言える。
「おいおい、今日も負けに来たのかレオン、敗北が好きだね。」
「勘弁してくれや、俺に負ける趣味はねえ。」
町の人々に挨拶をしていき、それがすむとひときわ目立つ建物にたどり着いた。
神殿のように神々しさを持つ建物。
「中には居るぞ。」
ポカーンとしていると、置いてかれそうになったので急いでついていく。
「いらっしゃい。
今日は登録と、ラグナロクだな。
ファイトマネーは10000リングからしかないぞ。
お前さんはそれでも出るんだろうけどな。」
受付のおっさんの後ろにファイトマネー表、その横の受付にはオッズの書かれた賭けの表があった。
ファイトマネー表は1000リングからあり最高は10000000リング。
メインイベントとして行われるのか最高金額の試合も無い。
「ならそれでいい。
登録している間に頼む。」
「6歳児とは思わないほど、口が悪いし利口だな。」
「アンタらに似たんだよ。」
「紋章持ってから、人が変わったようになったってお前さんの親父からは聞いてるぞ。
まあ、自分のせいじゃないかって俺に相談してくるくらいには心配してたから、少しは家族の会話してやれよ。
俺らが言えることじゃねえかもしれないが、家族のいられるのは今のうちだけだぜ。」
「とっと済ませてくれ。」
「スライムは戦わせないのか。
お前の戦い方を見せるために見学させた方がいいか?」
「たのんだ。」
スライムを取り残し、レオンは控室の通路に向かっていった。
「ほんと6歳児とは似ても似つかないよな。
お前さんは合体スライムの使い物にならなくなって追い出されたスライムだろ。」
「スラ。」
コクリと頷く。
「スライムの紋章を持つ大半はそいつを捨てる。
お前さんみたいな合体スライムから追い出されたスライムしかいないからだ。
でも、あいつは違う。
レオンは紋章が分かったのは3つの時、そいつはもう親の方が絶望的な表情してな。
俺らもレオンの親父さんには世話になってる。
その分、構ってやりたいのさ。
まあいらないお節介みたいなんだが、あいつは信じて良いぜ。」
まだ、レオンと契約して日が浅いスライムに対して信用しても良いとはどういうことだろうか。
信用できないのが当たり前なのに、信じていい。
これがわからない。
「スラ?」
「まだわからなくていい。
これからわかるぜ。
アイツの濃密な時間がな。」
一緒に観戦できるところに向かいながら、レオンについて考えていた。
「ここが、我がラグナロクと呼ばれる闘技場。
いや、殺し合いの場所だ。」
観戦場は映像には水晶から映像が映し出され、氷山、火山、雷雨の迸る地形など様々な地形で行われていた。
「ここにはモンスターの枠組みを超えた奴らでさえ、来ることがある。
ラグナロク、神々の最終戦争と呼ばれる所以は神の力さえも通じない恐ろしい奴らが来るからだ。
ま、このシステム自体は古代人が作成したものらしいから詳しくは知らないが、転送と同時に戦闘が始まる。
野生のモンスターの場所を示し、その強さをさっきのオッズ表で表す。
レオンはモンスターを相手に素手で戦う人気の闘士さ。」
人間が死にかけそうな映像が目に入った。
すると消えた。
「消えた奴らは、控室に戻ったのさ。
医務室で癒やせば幾分良くなる。」
一体何度、彼は負けたのだろうか。
何度、一切相まみえることのない自分に対して、紋章を手放すことなく死にかけることができるのか?
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スライム道
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