第5話 剃髪(坊主)は禿ではない 202204090700

ごつい体格をした筋肉ムキムキの禿げツルピッカのおじさん。

スライムの受けた印象は、ツルツルピカピカおじさん。

かなり失礼な事を思っていたら。勝負が終わりそうだった。


ローンは騎士達を手玉に取るように投げ飛ばしていた。転ばせたり、踏み潰すしたりもしていたが、基本的には投げ飛ばしているように見えていた。


「強い力はそれだけ、自身を壊す。

 スライムのいい所は自分で自分を壊すことがない。

 それと自滅する可能性が低い。

 逆に言えば攻撃力が足りないってことにつながるんだが、それを補う方法は後で教える。」


見ても分からないよ。

自分とは身体の造りも何もかも違う自分に何ができるって言うのさ。


「ありゃあ人間業じゃねえだろ。

 ここじゃ、いろんな分野のはみだしものが集まるがあいつは特別性だから気にするなよ。

 スライム、お前も相当苦労しているんだろうが、あいつは悪い奴じゃあないんだ。

 不器用なんだよ。

 6歳児だってのに、親からハブられて、この世の終わりみたいな顔したかと思えば、どんなモンスターの紋章授かるかもわからないのに、師匠になるからには彼らよりも強くならないとってな。」


不器用にもほどがある。

なんでわざわざ、自分を鍛える必要があるのか。

魂魄系の紋章を持つ者には肉体の操作能力が向上するため鍛えた方がいいが、大抵のモンスターは鍛える必要なんて一切ない。

人間の紋章の割合はモンスターの数に応じた割合となる。

絶対数の多いスライムは基本的には10より下の数が多く、極めて稀に100を超える数を従えられれば王宮に召し使えることができるという強さかもしれないのに。

なぜ、自分が強くなる必要は一切ない。


むしろ弱いままでいい。

人間には自分たちを強制的に従わせる力があるのだから、対等な関係になる必要などなかったはずだ。

なのに彼は自身の身体を徹底的にいじめていたとツルツルピカピカおじさんは言う。


このヒトは何か信用してしまいそうだけど、信用してはいけないと自分の生存の勘が言っていた。


何故、この人はレオンが徹底的に体を苛め抜いていたことを知っているのか。

この街に来るのは初めてではない。

しかし、視ての通りの治安の悪さから幼い子どもが来るような場所ではない筈。

まさか、人攫い?


「その人は人攫いじゃねえよ。

 金払いの良いマネージャーさ。」


「今日も負けに来たのか?

 ファイトマネーは出すが、あまり負けてくれるなよ。

 組むのがめんどくさくなっちまうからな。」


ファイトマネーって、やっぱり人攫いで、子どもたちを戦わせているんだ。


「スラスラぁ。」


「だから違う。

 信用しきれないのはこの人の魂魄のせいだ。

 こいつの魂魄は不信感を募らせる。

 逆にそれを利用して、上手く自分に有利な条件を付き立てる商売人だよ。」


不信感は時に武器になる。

不信感はあくまでも不信感。

確固たる証拠なく疑っているも同然の環境を日々受け止めるのは苦難の日々を迎えるが、逆に言えば弱みを見せていない証拠にもなり、見る目のある人が見れば優秀な人だとわかる。


「生まれゆく言葉、消えゆく言葉、スライムの中に生き続ける言葉、もしも、その言葉に疑い持っているのならそいつはサンミラの不信感になるのさ。」


「おい、能力を言うのはNGだろ。」


「あくまで俺なりの予想結果を言っただけだ。

 当たっていたのならすまなかったな。」


「ったく可愛げのないガキだ。

 領主様もほんとこんなガキが生まれて頭を抱えているだろうな。

 家族の中でハブろうとしても屍の如く這いあがってくる。」


「よく言うだろキングに勝てるのはジョーカーだって。

 ポーカーフェイスだけじゃなくてカードのルールも忘れたのか?」


頂点に勝てるのは堕ちたモノだけ。


「ああ!わかったわかった。

 今日はもう勘弁してくれや。

 そこの騎士たちから身ぐるみ剥いでも何にも言わんから、今日も頼む。」


「あいよ。」


鎧からヘルム、下着に至るまで一切の容赦なく剥がしていき、全て紐に括り付けて持っていた。

どこにそんなパワーがあるのか非常に気になる。


「魔術はただのズルだ。

 同じ体格、体重なら勝負はまだわからないが、この術式を見つけられてよかったってもんだ。」


「魔法より前の技術体系を会得するお前もお前だけどな。

 一部いるっちゃいるが裏の住人だけだから、派手にやるなって言っているのによ。」


「なに、コイツらは国境街の恐ろしさを知らずに賭けで負けましたって言えばそれでおしまいだろ。」


「違いない。」


ここは国境街、8つの国が隣接する緩衝材の役割を持つ街であり。

大陸きっての激戦地帯。

血で血を洗う祭りが日々繰り広げられ、国のプライドを持ったバカはすぐに殺される。


もし、ここに住まう者たちがいるとすれば、守りたいと思う人も命も無い。

血も涙も無い人間たちだけだろう。


吟遊詩人の歌にはこうつづられていた。


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スライム道

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