第3話 姉2 202204080000

「木の根だなんて、食べ物に程遠いよう。」


自分も確かにそう思う。木の根っこなんてスライムですら中々食べることのない食物だ。

レオンはそれをさも美味しそうに食べているのだから、変人にしか見えなかった。


普通に一人の人間として社会性が欠如している。

幼いうちにそんなことされては治さないと思うのもごもっとも。

親だったら複雑な心境だな。


スライムはもっと、この話が長引いてくれと思っている。

だってその分稽古の時間が減るから。

どちらの擁護もしないことで話を平行線に持っていくサボり術を稽古が始まったと同時に会得したのだった。


「誰が何食べるかなんて、勝手だろ。

 俺はこっちの方がいいんだ。」


「いつでも食べたくなったら言ってね。」


「あいよ。」


なぬ!話が終わってしまうだと。

もっと休んでたい。

ルナに持っといてくれと訴えるようにキラキラした眼差しを向ける。


「すらぁ...すらぁ...」


「またスラちゃんに変な訓練させていたの?

 こんなにも可愛いのにそんなことさせて可哀そうだと思わない?」


「思わない。

 スライム、なに稽古やりたくない顔をしてるんだ。

 安心しろ、今日は街に行く。」


街?


「スラ?」


「街だ。

 そろそろ契約した届け出を出さないと税金泥棒って言われちまう。

 まあ、スライムに町は初めてだから良い余暇になる。」


「街に行くの?

 なら一緒に行ってもいい?」


「買い物に行くわけじゃないから却下。」


「ぶーぶー。」


「そういっても無駄だ。」


良かった。

今日はもう稽古が無いんだと思うだけで心が安らかになる。


「そいじゃ、走って街まで行くぞ。」


「スラ!(嘘!)」


街に行ったことは無いがレオンと出会ったところに来るまで一切街の影なんて見つからなかった。

つまりは相当な距離がある。


「レオン、それだったら私かエイミーに行った方が早く着くよ。」


「呼んだ?」


空間が捻じ曲がり、禍々しい悪魔と緑色の髪をした少女が姿を現す。


「エイミー!

 また、空間に引きこもっていたの。

 私にも入らせてって言っているのに。」


エイミーはレオンの姉の一人で緑色の髪をツインテールにしている鳶色の瞳をした少女。

ルナとは双子だ。


「ダメ。

 一回10000リング。

 それと私はお肌に紫外線を入れないようにするために入っているだけ。

 他の肌にいい光は居れているから問題ない。」


エイミーはルナと違ってませている。

スキンケアなどの化粧品をお小遣いで買うほどにはませている。

スライムも年齢を詳しく聞いているわけではないがレオンが4歳くらいを想定した発育なら、彼女らは10歳程度だろう。


「なんでぇ。

 レオンは入れてくれるのにぃ。」

 

「レオンはお金払ってくれるから。

 クライアントの要望には応えるのが私の流儀。」


「レオン...どこかでまたバイトをしてたの?

 ダメだって言ってるよね。

 お母さんたちが心配するよ。」


踵を返したレオンは自分を掴むと。


「すら゛~~~~~~~~~~~。」


投げ飛ばしてしまった。


「おっとスライムを投げ飛ばしてしまった。

 追わないと行けないな。

 それじゃ。」


強引なごまかしをしている。

触れられたくない話題だと言っている。


「気になるなあ。」


「ルナはレオンに構い過ぎ。

 レオンもレオンだけど、無償の愛を信じていない。

 そういうふうに育ってしまったのはわたしたちの責任のはず。

 信じないのなら、信じられるものを与えた方がずっといい。」


「私はもっとレオンと遊びたいから構うよ。」


言いたいのはそういうことではないのだが。

一応二人とも神童と呼ばれるくらいには頭が良い。


ルナは無知ゆえの探求心から来る知を求める欲求の無垢な子どもの神童。

エイミーは基礎を徹底的に極めた理を読む神童。


どちらも神童と呼べる頭脳を持っているのに毛色が違い、性格も異なった思考回路を持つため互いに独自の理論を形成している。

優劣が付けられない分、どちらの言い分も通ってしまうのだから怖い。


「お父さんたちもお父さんたちだよ。

 レオンを除け者にして!」


「じゃあ世界がそうじゃないって言いきれるの。

 私たちは運が良かった。

 レオンは運が悪かった。

 もし、レオンみたいに蔑まれるようだったら、私たちがレオンみたいに、いいえ、もっと悲惨な目にあっていたでしょう。」


「どうしてそう言い切れる? 

 私にはわからない。」


「家族は社会の縮図である。

 家族は人間社会の最小単位であって、最小単位が社会的に除け者にしている以上、それが当たり前。

 レオンのように戦闘能力、生産性がともに低い紋章に対して蔑む目線が行き来するのは明白。

 そして、レオンは伊達に私に10,000リング払っていない。

 私たちが思っている以上にレオンは強い。

 いいえ、強くなりたいと思っている。」


「なにそれ。

 私もレオンが強く成れるように手伝えば、一緒のご飯食べてくれるのかな。」


彼女の背後から強い光が現れ天使が姿を現す。

黄金の翼とヘルムを被った天使は如何にも強そうだ。


「さて、それはどうかしらね。」


スライムを投げて行った方向を見据えながら、レオンとスライムがこれからどこに向かうのかを知っているエイミーは彼らの無事を祈るのだった。


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スライム道

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