第21話 対決!【黒魔術VS鬼道陰陽道】(後篇)

 「あなたに決闘を申し込みます。

異論はありませんね。」と命道トモエは

厳しい表情で黒き魔女カトリーヌ・フォン・ブレルを見据(みす)えて言い放った。

対して黒き魔女は多少面食らうところもあったが、何故かこうなることを予想していたかのように 「ええ!あなたに長い歴史というものが問題ではない、本当の実力をお見せしますわ。覚悟なさい。」とこちらもおとらず

トモエを睨み見据えた。


 2人の間に異様な空気が流れた。

無論、敵対心はあったのだろうが、何故か

互いの力量を確認することが目的のような

命道トモエにしろ黒き魔女カトリーヌ・フォン・ブレルにしろ少なくとも単純な激昂(げきこう)による対決ではなかった。

そんな中、「GUZE(グゼ)様、宝刀をお返しいたします。」とトモエは両手の平で宝刀を支え

立ち姿で捧げ物でもするように頭を下げGUZE(グゼ)に渡した。

「わかった。しばし預かろう。だがいまの私にはまだ必要ないものだ。後でまたトモエ殿に返そう。」とGUZE(グゼ)は言った後に宝刀を受け取り脇に抱えた。

気のせいなのかもしれないが、

宝刀がGUZE(グゼ)が持つことにより刀身全体が薄ぼんやりと光を帯び出したように見えた。

「トモエ殿、無粋というものだろうが

一応聞いておきたい。何故私に宝刀を渡して対決に臨む。宝刀を所持していれば優位に立つことが出来るのではないか。」

とGUZE(グゼ)の問いに対して命道トモエは

「残念ですが。私では宝刀の潜在力をほとんど発揮できません。それに宝刀はGUZE(グゼ)様のもの。私ごときが続けて使用すべきではありません。それに……。」と言い淀んだが「それにこのようなことを言うのは不敬にあたるかもしれませんが、使い慣れない宝刀より使い慣れた刀のほうが自らの力量を発揮できると存じます。」

「またその方が相手の方とも互角の条件で対峙できると思いました。」

「成程、やはり愚問だったな。どんな宝物も

その運用次第では普段使い慣れたものより劣るか。」とGUZE(グゼ)は目を閉じ微笑(びしょう)混じりに答えた。

「お気を悪くされたのなら誠に申し訳ありません。GUZE(グゼ)様」とトモエはややすまなそうな表情を見せた。

それを見てとったGUZE(グゼ)は

「別に気を悪くしたわけではない。

それに今回のことは私の未来視である程度

わかっていた事だしな。」と未来視という超常の力を目を閉じまたも微笑(びしょう)まじりにこともなげに口にするGUZE(グゼ)で

あった。

新ためてGUZE(グゼ)の底知れない実力を

再認識した命道トモエだったが黒き魔女との決戦を前に時間の猶予はあまりなかった。

「それではGUZE(グゼ)様。我の分身(霊刀)を持参したく思います。しばしお待ちください。」と

立ち姿で上品に深々とお辞儀をするとトモエは吉備津(きびつ)を返すように背を向けた。

背を向けたトモエは数歩の後、来たときと

同じように懐から折り鶴を取り出した。

折り鶴を手の平の上に置き念を込めて

「ふ〜」と息を吹きかけると手の平から滑り落ちながら大きさがみるみるうちに巨大となり地につく時にはトモエの数倍の大きさになっていた。

「ほう、面白い術を使うな」と

GUZE(グゼ)は感心したように言った。

「あらかじめ形状を記憶させ大きい本体を極限まで圧縮、更に圧縮した形状も記憶させ

術者本人の念や生体認証により自由に両方に

姿を変えるわけか。これは私でも使うと便利かもしれんな。」

一瞬でそのものの本質を見抜きこともなげに同じことを可能とするGIZE(グゼ)の万能性は

底がしれなかった。

そんな中、「すぐに戻ります。」と

GUZEに「ペコリ」と頭を下げ女性らしい所作で横向きに巨大な折り鶴に乗った命道トモエは目を閉じ次の瞬間、大きく目を見開くと

折り鶴は急上昇、通信の際にマッピングされていた自家用ヘリの方向へグライダーのように宙を滑り飛行を始めた。

その速度は非常に早くあっとゆう間に

視界から姿を消した。

数分後、何事もなかったように命道トモエは元の場所に帰ってきたがその手には趣味の良い煌(きら)びやかな袋に収納されいた

霊刀「菊一文字」が握られていた。

「お待たせいたしました。」と

トモエはGUZE(グゼ)に対して一礼すると

視界をGUZE(グゼ)から黒き魔女カトリーヌ・フォン・ブレルに移し

「黒き魔女よ!すぐに決闘を始めたく思いますが、準備はよろしいですか!」

と勇ましく言葉をかけた。

「もちろんですわ。いつでも受けて立ちます。」と待っていましたと言わんばかりに

黒き魔女はこれに応えた。

2人はGUZE(グゼ)とトモエの死合いの際の距離感の間合いとほぼ同等の距離で向かい合った。

そしてどちらともなく戦闘の構えを取った。

命道トモエは刀を袋より出し丁寧にたたみ僅かに茂っている草の上に置くと自然体で力みなく中段の構えを霊刀「菊一文字」で構えた。

対して黒き魔女カトリーヌ・フォン・ブレルは大きな「賢者の石」がはめ込んである

オリハルコン製の杖を左手に持ち前に出し

やや半身の構えで右足を引いた。

2人の対決は序盤、静かに始まった。

例えるなら黒き魔女は動(どう)、トモエは静(せい)、と攻撃の質的にはそうだろう。

だがしばしの間の後、仕掛け始めたのは以外にも命道トモエの方(ほう)だった。

「ジリ、ジリ」と爪先からにじり寄るように

間合いを詰め始め、数分後にはGUZE(グゼ)に

仕掛けた間合いの近くまで詰め寄った。

黒き魔女カトリーヌ・フォン・ブレルは

といえば口では軽薄とも取れる発言をしながらも接近戦を得意とし正体不明の術を使う相手には慎重でどちらかと言えば彼女らしくなかったかもしれない。

2人の距離はトモエのにじり寄りで徐々に詰まりGUZE(グゼ)に仕掛けた間合いの数センチ外からトモエは仕掛けた。

中段から上段へ構え縮地からの打ち込みだった。

対して黒き魔女はトモエが自分に到達する

手前で霊刀「菊一文字」を地上最高級の金属

「オリハルコン」の杖の上部で音速を超える動きで受け止めた。

「ドーン」と「ガシャーン」と音速越えの音と二つの最上級の杖と刀の激突する音が周囲に響いた。

このやりとりを皮切りに事態は一転、激しい攻防へと切り替わった。

命道トモエは上段から最上段に構え直し頭部、肩口、更に刀を横向きに胴体、下から上に向かう切り上げなどありとあらゆる攻撃を繰り出した。

黒き魔女はトモエの全ての攻撃を

「音速越え」の杖捌きで受け止めていたが

攻撃の隙をみて自分から仕掛けるタイミングを探っていた。

命道トモエはこの激しい攻撃の間、ほとんど息を止めている。

故に彼女が息を吸い隙が生じる一瞬を待っているのだ。

程なくその瞬間は訪れた。

トモエが攻撃を中断し息継ぎをしようと後退した瞬間に攻撃に転じたのだ。

ファイアーボール、ライトニングボルト、

無詠唱の魔法は最速でトモエに襲い掛かった。

そんな槍のように降り注ぐ攻撃も

命道トモエは見切り軽やかなステップを踏まえて舞うように躱(かわ)していった。

両者とも動きが止まり再度の仕切り直し。

序盤戦は五分五分、2人の対決は始まったばかりである。


第21話 完 続く 次回 対決!【黒魔術vs鬼道陰陽道】(特別篇)



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