第19話 対決!「黒魔術VS鬼道陰陽道」(前編)
GUZE(グゼ)の背後上下、左右横、そして
宝刀による今までで最速の抜刀の刃が
右側面より襲いかかった。
GUZE(グゼ)は思考した。
この間、0.0001秒!
そして導き出した答えは
命道トモエの抜刀が真っ先に命中する
と思考し右手を掌底打で命中の瞬間、宝刀の側面にベクトルの方向を変える力を加え下から上に跳ね上げた。
その勢いをかり左右から迫る青龍、玄武を
回転力を利用し横回転で「ドーン」と音速を超えた衝撃音がする手刀を繰り出し破壊!
更に左足を軸に回転力と腰の捻りで十分に威力を増した右踵蹴りで上から下から迫る朱雀と白虎にほぼ同時に命中させ粉砕した。
「ドカーン」と手刀を放った時より遥かに大きい音速を超える衝撃音が周りに響いた。
全ての動作が完了するまでの時間は秒(びょう)さえかからない凄まじいスピードだった。
踵蹴りの威力は凄まじく接地した地面は陥没ではなく地割れのような大地が分断され底が見えない状態になった。
その神業(かみわざ)的な体捌(たいさば)きを
目の当たりにした命道トモエは驚愕し
一瞬動きが止まったが、若干の時間が経過し
「ハッ」と我に帰りその場を後方へ大きく
飛び退いた。
飛んだ拍子に長い黒髪が乱れた彼女は左手で
額と耳元の髪の乱れを直しながら
「GUZE(グゼ)様、なんというお方なのですか。」とわかっていたとはいえ人間を超えた域にいるGUZE(グゼ)の実力をみて意気消沈せずにはいられなかった。
「それでも」と決意の眼差しで眼光に力を取り戻した命道トモエは巫女服に酷似した
衣服の懐より取り出した護符を左手の人差し指と中指に再び挟むかたちで広げて持った。
だが「遅い!」とGUZE(グゼ)が言葉を発すると一瞬で彼女の前に立ち衣服の袖口と胸元を
掴んだ。
胸元を掴んだことにより命道トモエのふくよかで柔らかな胸の感触と鼓動が手からGUZE(グゼ)に伝わってきた。
鼻腔には彼女の芳しい匂いが伝わってくる。
並の男ならばその幸運に酔いしれるところだろうが、GUZE(グゼ)は無表情で一切の動揺は微塵もなかった。
掴んだ部分を起点に一瞬彼女に背を向けたと思った瞬間、腰で跳ね上げるように背負い投げを放ったのだ。
見事に背負い投げは決まりGUZE(グゼ)の配慮からやや草が密集する地面が柔らかな部分へ
投げ飛ばされた。
だが「ドスーン」とダメージの少なさに反して音だけは派手に響き渡り、そのショックから護符と宝刀が手から離れ吹き飛んでしまった。
ダメージの少なさから命道トモエはすぐに立ち上がろうとしたが、間髪入れずにトモエの胸元と袖口に添えられていた手は退(しりぞ)けられ握り締められた右拳が彼女の顔面に向けられ寸止めされた。
顔面への右拳からか動きは遅いものの最短の無駄のない動きで投げ技との見事な連携から繰り出された為、かわすのは至難の業(わざ)だった。
向けられた右拳の上方にあるGUZE(グゼ)の口元より「まだ死合(しあ)いを続けるか。」という言葉が命道トモエに向けてかけられたが、
「いえ、私では遠く及ぶところではありません。完敗です。参りました。」と彼女は仰向けまま自らの瞳を閉じ告げた。
両拳(りょうこぶし)は握り締められた側が外に向き彼女の目頭から流れ落ちる涙を覆い隠すように添えられた。
その一連の動作は非常に女性らしいものであった。
(終わりましたお祖父様。)
命道トモエは死合(しあ)いが終わった安堵感と
自ら慕い敬う対象のGUZE(グゼ)の力量が祖父の御眼鏡(おめがね)に十分かなうものであるため涙を流したのだが、その涙を別の解釈で捉えるものがいた。
誰あろう黒き魔女カトリーヌ・フォン・ブレルである。
彼女は命道トモエがGUZE(グゼ)に挑み敗れたことを悔しがり涙したものだと勘違いしたのだ。
無論、トモエの胸の内にその事がまるでないわけでもない。
だがその事より不敬を承知で挑みかかったこと、その行為を正当化する以上にGUZE(グゼ)の実力が予想を遥かに上回っていたこと。
自分の出来ることは全てやり終えたとの安堵感により流れた涙であった。
だが黒き魔女はそう考えずシンプルに自らの力量が相手に遠く及ばず流れた涙だと思ったのだ。
「散々(さんざん)、私のことを罵(ののし)っておきながらとんだ体(てい)たらくね。」と
ここぞとばかりに命道トモエに食ってかかった。
「そうですか。」と対する命道トモエは
GUZE(グゼ)に投げられ寝そべった状態で
両手で隠した瞳を開き手を退(ど)けると
上体を起こしながら言った。
彼女にしてみれば目的が達成された以上、
黒き魔女の相手をするつもりはなかったが、
次の言葉が事態を一変させた。
「GUZE(グゼ)が手加減していたのにたった数分で決着なんてね。私でももう少し持ったわよ。これではあなたが習得したヘンテコな術とやらもたかが知れるわ。あなたの一族とやらも大したことはないわね。」と
本心で黒き魔女カトリーヌ・フォン・ブレルはそう思っていたわけではなかった。
だが正論とはいえ命道トモエには色々言われ彼女は少なからず誇りを傷つけられていた。
たった数分でもGUZE(グゼ)が初めから攻撃も前提に入れた攻防となるとより密度の濃いものだろう。
自分の攻撃を当初受けていただけのGUZE(グゼ)とは異なる。
それでも彼女にも黒魔術最強の自信があった。
自信ゆえに出た言葉だったのか、ある意味において黒き魔女はこの言葉を後悔することになるのだが、まだ少し先の話である。
「あなたに私たち一族を罵(ののし)る資格はありません。」と命道トモエにしては考えづらい激しい言い回しで言葉を返した。
「そちらこそ千年にも満たない歴史で
日本の神代の時代(西暦初頭)より続く
千数百年以上の歴史を保ちその中で培われてきた我が家の鬼道陰陽道(きどうおんみょうどう)を汚す発言は私が許しません。」
黒き魔女カトリーヌ・フォン・ブレルはどうやら命道トモエの逆鱗に触れたようである。
神代の時代より続く一族が連年と培ってきた術の集大成に一廉(ひとかど)ならぬ誇りを持っていたのだ。
「望むならお相手致します。他者を理解しようともせず、目の前で起きた結果のみで非難するなど軽率の謗(そし)りを受けますよ。」
またも正論である。
だが正論でさえあれば万事ものごとが解決するわけではない。
トモエの迫力と正論の前に押し黙ったように見えたが次の瞬間、黒き魔女の
中に邪(よこしま)な考えが浮かんだ。
今までの命道トモエの言うことはほぼ正論といってよい内容である。
だが常に上から目線のような言動は
黒き魔女からすると承服しかねる。
そう考えるとせめて命道トモエが慌て
ふためく姿は見てみたくなるもの。
悪魔的思いつきとも言える考えが浮かんだ黒き魔女は自らに光の反射を屈折した光魔法をかけた。
命道トモエが吹き飛んだ宝刀と護符の位置を確認のため目を離した隙に彼女の姿は周囲からは全く見えなくなった。
その姿で彼女はできうる限り気配を消して
命道トモエの背後に回り込む。
考えてみれば黒き魔女カトリーヌ・フォン・ブレルは望まぬにせよ敵として対峙した
GUZE(グゼ)の前で幾多の羞恥(しゅうち)を
さらしてきたのだ。
その彼女がこのような行動に出るのは
無理からぬことであったかもしれない。
トモエの真後ろに回り込んだ黒き魔女は
「さあ命道トモエ!敬愛するGUZE(グゼ)の
前で貴方も羞恥をさらしなさい。」と言うや否や立ち上がったばかりのトモエの巫女服に酷似した衣服の肩口を左手で袴を右手で掴むと下へおもいっきり引っ張り下ろした。
「ビリビリビリビリ〜!」と凄い音を立てて
命道トモエの衣服は剥がれ落ちた。
「さあ、あなたも恥をかきなさい!」と
黒き魔女カトリーヌ・フォン・ブレルは
命道トモエに言い放ったが、彼女の視界に入ってきたのは巨乳だった。
正確にはトモエの下着姿を見られて羞恥に
赤く染まる顔の表情が見たくて素早く前側右斜め横に移動したのだが、黒き魔女の視界には衣服を剥ぎ取られた反動でいまだに波打っている命道トモエの巨乳があった。
それを見た黒き魔女は心の中で
(負けた…。)と思うくらいの巨乳だった。
「ハツ」と我に返った黒き魔女は命道トモエの裸を上から下までじっくり観察した。
トモエの美貌はもとより黒く艶のある長い髪、それを際立たせる彼女のプロポーション。
巨乳は胸と胸との間隔がなく均等で乳輪も見事な位置と大きさを有(ゆう)していた。
胸から腰にかけての曲線は美しくウエストは無駄なく締まりヒップは俗に言う桃尻というほど整った形をしていた。
アンダーヘアーは黒く何故か若干湿っていて
その下の縦のラインも丸見えだった。
絶世のプロポーションである。
観察していた黒き魔女は再び我に返り
透明化の魔法を解き笑顔で掛けた
最初の言葉が
「あなたの一族は裸族なの!?」であった。
その言葉を切っ掛けにあまりの出来事に
動きが止まり茫然自失(ぼうぜんじしつ)と
なっていた命道トモエは
「きゃー!」と悲鳴をあげて右手で胸を
左手で秘所を抑え「ストーン」と腰砕けに
両膝をつき座り込んでしまった。
【命道トモエ】
彼女は完璧なように見えて
ちょっとだけ残念なところがある女性である。
第19話完 続く
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