第15話 「眉目秀麗、才色兼備、【命道トモエ】参上篇」(エクストラ)編

 覚えているだろうか。

ここは再び東京都新宿区市谷にある

人員268,000人以上、内訳 自衛官の人数

247,000人以上、それ以外の人員数21,000人程、日本の防衛の要、

日本防衛省内の4Fの一角にある戦略情報調査室である。

その重厚な木の年輪を生かした高級机と黒革の椅子に鎮座する男がいる。

机の上には「戦略情報調査室長」というプラスチックのプレートが置いてある。

少し白髪混じりの短髪に体格は170cm前後の中肉中背、高級オーダーメイドのスーツに身を包みやや太めの眉毛に通った鼻筋だが眼光鋭く独特の雰囲気を持つ初老の男が、今はアフタヌーンティーを楽しむように

落ち着いた状況で紅茶を飲んでいた。

そんな時に「コンコン」と慌しくドアを

ノックして入室の許可を得ようとするものがあった。

初老の男はせっかくのアフタヌーンティーを

邪魔立てされてやや不機嫌ではあったが

仕事に関して妥協を許さない性格である為、

すぐに気持ちを切り替え「はい、どうぞ」と返答して来訪者を部屋に招き入れた。

招き入れた者を目にして初老の男こと

通称「室長」と呼ばれる男は目を丸くし若干

驚いた表情を見せた。

「また君か。ここのところ立て続けだな。

しかしそう何度も私のところを訪れるほど報告事項があるとは思えないのだが。」と

再び訪れた者に対してやや呆れた口調で言葉をかけた。

それもそのはずである。

訪れた人物とは度々「室長」のところに報告に来ていた短髪の青いジャケットを着た爽やかな印象の青年だった。

青いジャケットの若者は室長の前に立つなり

「室長!命道家が動きました。」と報告をした。

それを聞いた室長は「命道家!あの命道家か!日本一!世界有数の財閥にして日本の政府にも隠然たる影響力のある。」

「はい、その命道家です。」と些か青年は

精気を失った青い顔をして報告に来た。

「しかしわからんな。まさかと思うのだが、

君が来たということは「例の奇妙な事件」の

ことで命道家が動いたと言うことなのか。」

「はい、そうです。」と青年は普段の明るい印象とは裏腹に少し沈んだ印象で室長の質問に答えた。

「そうか!例の件で命道家が動いたのか。」と今度は室長がティーカップを机の右側に置き両手の甲側の指を組みその上に顎を置き深刻な面持ちで押し黙った。

少しの沈黙の後、堰(せき)を切ったように

室長は青いジャケットの青年に質問を開始した。

「命道家が動いたというが。相手は世界財閥だ。どのような動きを見せても目立つもの。

具体的にどのような動きを見せたのか。」

「はい、北海道の帯広市の進学校に通っている命道翁の孫娘が急遽自宅にあるヘリコプターにて例の件の現場近くを飛行していたとの

報告がありました。」

「何故わかった。」

「はい、いきなり正体不明の飛行体が日本の北海道を領空侵犯で飛行するわけにはいきませんので、許可申請が出ていました。」

「成程、確かに孫娘の通学に使用するわけでもなく、正規のルートを逸脱しては騒ぎとなり許可申請なく領空を飛行はできんか。

下手をすると航空自衛隊の出動ともなりかねん。」

「それで以降の足取りはどうなった。」

「北海道大雪山景の旭岳近郊に着陸したようなのですが、それ以上のことは何も…。」

青いジャケットの短髪の爽やか青年は

不完全な報告になんとも歯切れの悪い口調で

すまなそうな表情で室長に答えた。

その様子を見てとった室長は

「何も君が悪いわけではないだろう。

今回は我々も想像していなかった大物がいきなり動いただけのこと。

問題なのはこれからの動向だろう。」と

やや青年を元気づける言葉をかけた。

その言葉を聞いた青年は現金なことに

いきなり表情を明るくし

「では室長、これからどう動きますか。」と

詰め寄るようにたずねた。

室長はやや呆れながらも

「現状の情報不足だな。

動こうにも動けんというところか。

もう少し情報の収集に尽力してくれ。」

2人は今後の対応の詳細を話し合っていたが、

「命道家」の真の姿を知る由もなかった。


「命道家とは神代の時代とされる西暦初頭から延々と長きにわたり代を重ねてきた日本では天皇家と並び歴史と伝統を積み重ねてきた家柄であるが、それは表の顔に過ぎない。

本来は歴史の裏側にあり鬼道陰陽道(きどうおんみょうどう)を用いて吉凶を占い時には

時代の勢力に加担し延々と続く日本の歴史の裏側を徘徊し勢力を拡大し現在の地位を築き上げた。

鎌倉時代になるとこれに剣術を取り入れて

幾人もの剣術指南役を抱えその中にかの高名な剣聖塚原卜伝もいたとされる。

歴史の表と裏の顔を持つ系譜、それこそが

【命道家】なのだ。


「命道家が関わってきたとなると今後この件は格上げの優先事項として場合によっては私から防衛省長官に報告をあげなくてはならない。

引き続き詳細な調査を続行してくれ。」

「はい、了解いたしました。室長!」と

青いジャケットの爽やか青年は右手を頭に当て防衛省の職員らしく敬礼をすると振り向きざまに丸い普通のドアノブを回して急ぎ退出していった。

その動向を一部始終見ていた室長は

「まさか【命道家】が動くとはな。

この件は我々が考えているより奥が深いのかもしれん。」と青年が立ち去った後、

独り言を呟いた。


 話を元に戻そう。

此処は黄泉平坂(よもつひらさか)のとある場所、死後の世界に通じる巨大な穴の近く御使(みつかい)とGUZE(グゼ)たちの話に立ち返る。

御使(みつかい)はGUZE(グゼ)に答えた。

「貴方様がこの地に来られた理由もわかります。そこの異邦人(エトランゼ)がこの黄泉平坂(よもつひらさか)に迷い込み死後の世界へと続く黒き穴に向かっていたからでありましょう。」

「察しが良いのは助かる。で、御使(みつかい)よ返答は如何に。」とGUZE(グゼ)が聞くと

御使は「私の答えは今回の件同様に了承致しましょう。ただし条件があります。」

「その条件とは、そこの美しい娘の願いを叶えることです。」と再び命道トモエの方に視線を移した。


「直接お助けくださったのは貴方様ですが、

その娘の運びし「神…。いやこれはあなた様の正体を暴露しかねない事柄で、現時点では望ましいことではありませんな。

配慮が足りませんでした。

ですがいずれにしてもその美しい娘が貴方様を助けて我々を元に戻せたのは紛れもない事実です。

であれば私どもも娘の願いに助力したく思う

ところです。

貴方様には返しきれない恩ができますが、

現世での事柄(ことがら)ゆえどうにもできません。

誠に申し訳ありません。

ですがもし我々のお力が必要になった時、

心の中で念じてください。

貴方様のお力なら可能でありましょう。」

「わかった。その際は世話をかけるな。

だが気にする必要はない。

神の使いたる者を救うのもまた私の使命。」

と言うとGUZE(グゼ)は念波(テレパス)での

会話をやめ視線を御使(みつかい)から

命道トモエと黒き魔女カトリーヌ・フォン・

ブレルの方に移し答えた。

「それでは帰るとしょう。帰りは瞬時で帰る。2人とも私につかまれ。」と言うと2人の女性はGUZE(グゼ)にしがみついた。

「御使(みつかい)様、我が願いをお察しくださってのご配慮、ありがとうございます。」

と命道トモエは感謝の意を伝えた。

そしてGUZE(グゼ)は

「これで失礼するが、御使よ。以後も壮健で神の加護があらんことを。」と最後に念波での会話をすると御使より視線を外しこの世界に来た時のもう一方の穴に視線を向け一瞬にその穴の近くに移動、穴の中に入っていった。

その光景に御使(みつかい)は

「あれがGUZE(グゼ)様。神々が現世に送り込んだ人類の最後の「希望」か。」と独り言を呟いた。

その頃には残りの御使(みつかい)たちも目覚め

ことの成り行きを傍観していた。

だがGUZE(グゼ)と会話していた御使(みつかい)が号令のように右手を上げると他の御使

たちはきた時と同じように整列すると

宮廷の貴人のような雅(みや)びな動作をしながら死後の世界へと続く、もと来た穴へ向けて歩んでいった。

そして「御使(みつかい)様たち。

本当にありがとうございました。」と

現世に戻る最中、命道トモエは再度心の中で感謝していた。


第15話完 続く









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