第14話 「眉目秀麗、才色兼備、【命道トモエ】参上!篇」(後編)

だが数十秒の後、最初に意識を失った御使が

ぱっちりと目を見開くと上体だけを起こし

GUZE(グゼ)を見据えた。

そして「お手間を取らせて申し訳ありません

。」と「ペコリ」と頭を下げた。

その立居振る舞いは宮廷の貴人のような

雅(みやび)なものだった。

今度は視線を命道トモエに移すと

「迷惑をお掛けしたな、美しい女よ」と

謝罪をした御使(みつかい)だが、よく口元を見ると言葉を発しているのに口が開かれ喋っている様子がない。

不思議に思った命道トモエだがすぐに

思いあたり「そうだ念波(テレパス)による言葉だ。」と

今度はGUZE(グゼ)が言葉を発することなく

命道トモエに話し掛けた。

そのやり取りを同じくGUZE(グゼ)の念波による声を聞いた黒き魔女カトリーヌは

「テレパス(念波)による受け答えを御使としているの!」とGUZE(グゼ)に問いかけた。

「ああ、そうだ。」と黒き魔女の問いかけに

返答するとGUZE(グゼ)は

「御使(みつかい)よ。まずは正気を取り戻してくれて何よりだ。

それでは話しに入らせてもらおうか。」

と御使(みつかい)のみならず黒き魔女や

命道トモエにも事の成り行きを理解させる

為に念波(テレパス)による会話を続けた。

「御使(みつかい)よ。まず貴方が必死で探していた2人の女性を許して差し上げてはいかがか。」

「それはできない。

死者は神の定めた場所に送られねばならない。これは純然たる神の定めた法なのだ。」

「あなた様にはお助けいただいた恩があれど

それをもってしても無理な話だ。」

と御使(みつかい)はGUZE(グゼ)を見つめながらややすまなそうな表情を浮かべていた。

それに対してGUZE(グゼ)は

「御使(みつかい)よ。あなたの言うことは理解できる。だが現実には2人の女性は今この世界にはおらず現世に復帰して生をまっとうしているのではないか。一度「魂返り」によって生き返った人間をまた神の法にそぐわぬからと再び死を賜りし後に死後の世界に導こうというのか。」

「それではあまりに慈悲に欠けるのではないか。御使(みつかい)よ、こうは考えられないか。もし単に神の法、すなわち「運命」がその者の死を定めていたのだとしても、その者ことを強く思う人が「想いの強さ」によって死すべき定めを覆し運命すら凌駕したのだと。

またその一途な思いに応えて神も死すべき

運命(さだめ)の者を許し再度の生を認めたのだと。」

その言葉を聞いた御使はしばらくの間、

押し黙った。

そして意を決したような表情で

「わかりました。あなた様の言われた通り

慈悲にかける行為を断行することが神の御心とも思えない。

またこの世界に2人がいないことは神の定めた

運命が改変されたとも考えられる。」

「本来であれば一度死した人の子が現世に戻る事はできないが。

今回は不問といたしましょう。

それとあなた様の来られた理由も察しがついています。」

「その異国よりの訪問者のためでありましょう。」

「その通りだ。御使(みつかい)、貴方の返答は如何に。」

「私は…。」と御使は答えた。


第14話 完 


「眉目秀麗、才色兼備、【命道トモエ】参上篇」(エクストラ編) に続く


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