第13話 「眉目秀麗、才色兼備【命道トモエ(めいどうともえ)】参上!篇」(中編)

 「今だ!」と短く声を出し絶妙な足捌きで

身体をローリング(回転)させながら御使(みつかい)の懐深く潜り込んだGUZE(グゼ)は右手を

スクリューのように回転させ御使(みつかい)の

下腹部に渾身の右拳の一撃を叩き込んだ。

霊体同士とはいえただの打撃それだけでは

御使(みつかい)に決定的なダメージは与えられないが

威力を倍増するために右拳をスクリューの

ように回転させ渾身の一撃を叩き込んだ

GUZE(グゼ)の咄嗟(とっさ)の判断は神技的な戦闘センスを感じさせた。

無論これだけでは御使にとどめを刺すことはできないがしばしの間、動きを止めるのには十分だった。

動きが一時的に止まった御使を確認し

「トモエ殿。」とGUZE(グゼ)が叫ぶと

「承知いたしました!」と命道トモエは

GUZE(グゼ)に向けてしなやかな身体の筋力を瞬間的に行使して弓反りになり弓から矢が射手されるように太刀を一直線に放った。

「ビュー」と空気を切り裂く音を響かせ飛んで来る太刀の柄の部分をがっしり掴み太刀を受け取ったGUZE(グゼ)が構えると

銀色の鮮やかな刀身にL字型の突起が出現した。

正確には銀色の見事な光沢の刀身と同じ色合いのオーラが頭身を囲むように出現したのだが、まるで刀身にL字型の突起が現れたように見えたのだ。

その状況を見た命道トモエは「やはり。」と

短く言葉を紡いだ。

GUZE (グゼ)は刀身を剣道でいうところの

中段に左足を前に右足を一歩引き

自然な構えをとった。

いわゆる剣道の中段の構えと呼ぶ姿勢で、

どちらかといえば防御に向いた型ではある。

その体勢から太刀を上段に振りかぶった

GUZE(グゼ)は一挙に御使(みつかい)の黒き翼とくちばしのような口を切り落とした。

するとみるみるうちに御使の姿は変貌しまるで雛人形の御代理様のような宮廷の貴人のような雅な服装と穏やかな表情で横たわり意識を失った。

中心となる御使を失った他の11人は今まで

統制の取れた動きをしていたが、いきなり乱れ不規則な動きをし始めた。

そんな中、命道トモエはまるで舞でも舞うように攻撃を仕掛けて来る御使(みつかい)の

腕を受け流したり時には掴み舞うような動作から御使を縦回転させるように投げ

地面に背中を打ち付ける動きを見せた。

その動きをつぶさに見ていた黒き魔女は

「私も身体強化の魔法を使い援護するわ。」

と強化魔法の詠唱に入った時、

「やめろ強化魔法は使うな!」と

GUZE(グゼ)が穏やかな口調で叫んだ。

「黒き魔女、あなたは霊体だ。

現世の肉体にかける強化魔法とは勝手が違う。霊体にかかる負荷は未知数だ。

予備知識と幾度かの実行なくばいきなり実戦で使うものではない。」

「でも彼女は。」と黒き魔女がちらっと命道トモエの方に視線を移し言うと

命道トモエは霊体の集合体の御使に対して

受け流し腕を掴んで絶妙の足捌きからの投げを決めていた「あれは弛まぬ修練の結果だ。

体術と足捌きそれらが魂の奥底に刻み込まれるまで何度も同じ修練を続けた武の極致なのだ。」

「故に本質的にあなたの魔法とは違うものだ。」

「それでは私はどうすればいいの。」

と黒き魔女カトリーヌが意気消沈しているところにGUZE(グゼ)は

「援護魔法を。規模はさほど問題ではない。

一瞬相手の気を逸らすか目眩しをするだけでもよい。」

無詠唱の魔法は詠唱がない分威力は劣るが

黒き魔女も自らの矜持が傷ついたのか

やや派手だが霊体の御使には効果がない

「サンダースパーク(雷閃光)」と無詠唱で

魔法の名前を言いながら放った。

数百人程度の軍隊になら有効な派手だが威力はまあまあという魔法ではあったが混乱している御使たちの気を逸らすには十分だった。

そんな中、降り注ぐ雷の雨を命道トモエは

軽やかに絶妙の体捌き足捌きを駆使して舞うようにかわしGUZE(グゼ)は雷の雨の着弾地点がわかっているかのような最小限の

動きでかわしつぶさに状況を観察、

一瞬で引き締まった真剣な表情になったかと

思えば次の瞬間、残った11人の御使たちに

向かい先の御使(みつかい)同様に黒き翼と

口ばしを切り落とすために動いた。

混乱状態に加えてダメージがないとはいえ

黒き魔女の魔法「サンダースパーク」も命中しているのだ。

動きを止める或いは鈍らせるには充分だった。

すかさずGUZE(グゼ)は斬撃を加え

「1人、2人、3人、4人、5人、……。」

と御使(みつかい)との間を残像を残すほどの凄まじいスピードで移動し黒き翼と口ばしのような口元を切り落としていった。

「9人、10人、11人!」と時間にしてたった

数秒で決着してしまった。

11人全ての御使は穏やかな表情を取り戻し

服装も雛人形のような宮廷に出入りする貴人のような上品な容貌と服装になり横たわり

意識を失っていった。

だが僅か数十秒の後、最初に意識を失った

御使の中心(最初に黒き魔女の前に立った)が

ぱっちりといきなり目を見開くと上体だけを起こしGUZE(グゼ)を見据えた。


13話 完 続く 

「眉目秀麗、才色兼備、【命道トモエ】参上!篇」(後編)に続く




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