第12話 「眉目秀麗,才色兼備,命道(めいどう)トモエ参上!」篇」(前編)
「GUZE(グゼ)様!諦めてはなりませぬ。」と一際美しい女性の声が響きわたり
長い髪の女性の影がこの世界に降り立った。
その女性の影は堂々とした歩みで「GUZE(グゼ)の側に近づいて来た。
間近に来たその女は美しかった。
艶のある黒髪は肩より長く極めて整った顔立ちは漆黒を思わせる黒い瞳に眉の少し下まで
ある前髪はナチュラルに右から分けられ
女性らしい整えられた眉毛、筋の通った鼻は
高く彫りも深い、唇も小さく薄い、目はパッチリした二重目蓋(ふたえまぶた)だが彼女の顔のチャームポイントは左目の下に泣きぼくろがあることだろう。
姿形は巫女装束のようにも見えるがそれより
もっと戦闘に特化した服装といえ額には
鉢金を仕込んだ鉢巻を平手から肘にかけて
漆塗りと赤の紋様が絶妙な籠手( こて)をしていた。
白い上半身には襟元や袖口に赤い刺繍がなされ下半身は赤の袴のようにも見えるが動きやすさ重視のスリットが入り太ももが時折
露出して見える服飾になっている。
足元は白い足袋に側面に小さな花模様が薄紅色の糸で見事に刺繍(ししゅう)してあった。
足袋とセットと思われる草履には白とその表面に赤い糸の刺繍が施されていた。
そのような見目麗しい女性側からGUZE(グゼ)の元に歩みより片膝を地につき首(こうべ)を垂(た)れながら挨拶をした。
「遅ればせながら【命道トモエ(めいどうともえ)】馳せ参じました。我が身を如何様(いかよう)にもお使いください。」
「来たか。」とGUZE (グゼ)は言葉を発した。
少し疑問に思ったのか命道トモエは
「わたくしが来ることをご存知だったのですか。」と問うと
「あなたが来ることはいく通り見た私の
未来視によってわかっていた。命道トモエ殿。」と平然とGUZE(グゼ)は言った。
改めてGUZE(グゼ)の凄さを認識した命道トモエは僅かの時間ポカーンとしていたが、
すぐに表情を引き締め
「流石はGUZE(グゼ)様!恐れ入りました。」
と再び頭をペコリと下げた。
「あなたが来たということは例の品を
持参してきたと解釈してよろしいか。」
「はい、流石です。そのことまでご存知とは。」
「正直、現世ならいざ知らず神域に近いこの場では御使(みつかい)を相手に過激な対応をせねばならぬかと少々困っていたところだ。
命道トモエ殿、あなたにはその品を使って
しばしの間、他の御使(みつかい)たちの相手を
してもらおう。私は御使(みつかい)の中心の
あの者の相手をしてタイミングを見計らい
例の品を私に渡してほしい。」
「委細承知いたしました。」
2人の阿吽の呼吸(あうんのこきゅう)ともゆうべき短いやりとりを聞いていた黒き魔女カトリーヌ・フォン・ブレルは
「一体何が起こっているの。
あなたは何!」
「私の名は命道(めいどう)トモエ!今は場合が場合なので自己紹介は後ほど。失礼ですが、足手まといの方は後方に下がって援護するか黙って鑑賞していてくださいますか。」
「足手まといですって。後から来て指図するなんて礼儀がなってないわ。」と
黒き魔女は憤慨したがGUZE(グゼ)が割って入り「彼ら御使には魔法による攻撃は通用しない。現世での物理干渉による攻撃そのものもな。」
「魔法が通用しないですって!そんな馬鹿な。」と黒き魔女カトリーヌは驚いた顔をしながらも苦渋な表情を見せ意気消沈した面持ちに陥った。
「彼らは大神によって創造された霊の集合体、霊体なのだ。
彼らや精霊、天使、などに物理攻撃や魔法が
通用しないのも肉体がない霊体だからだ。」
「通用するとしたら精神系の魔法だがそれも
致命傷にはなりにくい。」
「霊的存在でも現世のものに影響を及ぼす
なればこそ神の御使(みつかい)と呼ばれるのだ。」
ひと通り黒き魔女カトリーヌに概要を言った
GUZE(グゼ)と命道トモエへ御使の一切容赦のない攻撃が再開された。
いつのまにか御使(みつかい)は全て揃い
12人になっていた。
それは2人の女性たちを探していた者も
その場に集結したのだ。
まず御使の攻撃は突如現れた異分子の命道トモエへと向けられた。
人の数倍は有るであろう大きな手の平で
命道トモエを捕まえようとした。
寸前のところで後方に飛び退き所持してきた品を幾重いもの護符により封印されている
上質の凝った刺繍がほどこされている袋の中から取り出した。
それは一振りの太刀のように見えた。
命道トモエはその太刀を鞘から抜くと
見る者を魅了する極々自然の形で太刀を構えた。
不思議な太刀(たち)である。
見るからに普通ではありえないオーラを
放ちながらこの世界の干渉を受けつけない
そんな印象を受けた。
物理干渉を一切受け付けない御使(みつかい)たちの攻撃を命道トモエは華麗な足捌きと太刀による受け流しでかわし続けた。
数にものをいわせて攻撃を加えるが霊体の集合体であるはずの御使たちの体にその太刀は干渉し受け流し攻撃を無効化していった。
絶妙の相性と呼べるのか、その間にGUZE(グゼ)は御使の中心ともいえる最初に黒き魔女の
前に立ちはだかった御使(みつかい)を相手取り
素手でわたりあいながら渾身の一撃を打ち込む隙をうかがっていた。
御使(みつかい)がGUZE(グゼ)に両腕を使い掴み掛かろうとした刹那、
「今だ。」とGUZE(グゼ)は舞(まい)でも舞うように絶妙な足捌きで体を回転させながら懐深く入り右手をスクリューのように回転させ渾身の右拳を下腹部に当身(あてみ)のかたちで叩き込んだ。
第12話 完 続く
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