第8話 「試練への旅立ち篇」(中編)

「今からあなたの全身を心眼にて調べさせて

もらう。よろしいか。」と

GUZE(グゼ)が言うと

「よろしくお願いします。」と黒き魔女は

答えた。

GUZE(グゼ)は目を閉じ眼前の黒き魔女

カトリーヌ・フォン・ブレルの全身の

オーラの状態を心の目でチェックしていた。

「流石に凄いオーラだな。常人のレベルを

遥かに超えている。オーラが微かに乱れている部分があるな。」

「※第4のチャクラ、アナハータ、色がやや濁っているな。

感情を司る※ハートチャクラがやや機能不全か。この部分に何らかの封印がなされているな。」

GUZE(グゼ)は更に心眼の意識を黒き魔女の

第4のチャクラに集中した。

「成程、これが。」と言葉を発すると

これ以上ないという程の真剣な眼差しで

黒き魔女を見据えた。

その眼差しに一抹の不安を感じた黒き魔女は

「何かあったのですかGUZE(グゼ)。」と

問うとGUZE(グゼ)は

「あなたには【死んでもらわなければならない。】」



いきなりGUZE(グゼ)は黒き魔女カトリーヌ・フォン・ブレルに死の宣告をした。

その宣告に茫然とした黒き魔女は

しばし身動きがとれなかった。

やっとGUZE(グゼ)から発せられた言葉を受け入れる気になった黒き魔女は微妙に震える

左手でとんがり帽子からでる少し乱れた

縦ロール部分の金髪を整えながら聞き直した。

「わたくしは死ななければならない。

とはどういうことですか。

GUZE(グゼ)。」と黒き魔女カトリーヌが

改めて問うとGUZE(グゼ)は

「少し配慮が足らなかったようだな。

第4のチャクラ、アナハータに

神の封印がほどこされている。

あなたには覚えがあるはずだ。」

瞬間、黒き魔女カトリーヌ・フォン・ブレルにはある聖なる存在の影が脳裏を掠(かす)めた。

「ええ。」

GUZE(グゼ)は更に言葉を続けた。

「その存在が構築した封印はあなたの

第4のチャクラにほどこされている。

どのような神聖な力も魔法も解除には意味をなさない。」

「おそらく封印を構築した本人以外は解除は極めて困難だろう。」

「私自身に封印がなされたとして私が

それを解除することは可能だが、あなたには

そうはいかないだろう。」

「封印そのものを破壊し解除する方法があるが封印の一点に威力を集中するため

その凝縮度はあなたが放ったスーパーノヴァの数倍相当に匹敵する。

この世にある物理干渉では防御は不可能だ。

私でもなければ耐えられないだろう。」

「ふう」と息を吸い込みGUZE(グゼ)は

言った。

「これより私自身が聖なる力を※サハスラーラ(第7チャクラ、別名クラウンチャクラ)で極限近くまで凝縮してあなたの第四のチャクラに放つ。

本来神聖な力は無効化され私以外では解除はできない。

だが私が究極近くまで高めた聖なる力ならば

解除はできる。

だが……。」と言うとGUZE(グゼ)は

僅かに言い淀んだが話を続けた。

「それでもあなたの肉体は耐えきれず

崩壊するだろう。だが私がすぐさま再構成し

元に戻す。」

「しかしあなたの魂はそうはいかない。

肉体の崩壊とほぼ同時に黄泉へと送られることになる。つまりわたしは封印の解除と肉体完全再生後、あなたの魂を追い黄泉へ行き、

魂を救い無事肉体に戻し復活させなくてはならない。」

「大忙しというところだ。」と

普段、冗談らしいことは決して口にしないGUZE(グゼ)だが、そのことがかえって

ことの深刻さをものがたっていた。

だがその冗談が功を奏したのか

黒き魔女カトリーヌはお腹を抱えて笑い出した。

「あはははははは。柄にもないことを言うのですねGUZE(グゼ)。あ〜可笑しい。」

「でも少し緊張が解けました。」

「どのみちあなたの抹殺に失敗した以上、

依頼は果たせず報酬も受け取れません。

刻を費やし他の方法を探すという事も考えられますが、探し出せる確率は極端に低いでしょう。それならば……。」

黒き魔女カトリーヌは「ふ〜と」と豊満な胸が揺れるほど息を吸い込むと

覚悟を決めた面持ちで

「それならば、【覚醒者】としての

あなたの力に掛けてみたいと思います。

GUZE(グゼ)、あなたは出来もしないことを

軽々しく口にする人ではないでしょう。」

「ああ、その通りだ。」

とGUZE(グゼ)は真正面から

黒き魔女カトリーヌ・フォン・ブレルを

これ以上ない程の真剣な眼差しで見つめた。

そして「これより封印解除の業(ぎょう)に

入る。」

GUZE(グゼ)は座し結跏趺坐(けっかふざ)となり目を閉じた。

GUZE(グゼ)は「あなたが楽だと思える姿勢をとってくれ。」と言うと黒き魔女は戦いの後など微塵もない草原の草の上に正座した。

目を閉じたGUZE(グゼ)は

「失礼」と言うと黒き魔女カトリーヌの

封印解除のため、第4のチャクラのある胸の

中心に左手を添え触れた。

黒き魔女の胸が揺れ少し歪に変形した。

「あっ…。」と淫靡な声が心なしにでてしまった黒き魔女は頬を少し紅潮させ事の成り行きを見守った。

並の男ならば黒き魔女カトリーヌの豊満な胸の柔らかさと重量感と手を程よく包み込む

質感と適度に押し返す弾力感と暖かさの絶妙なバランスに欲情あるいは感動すら覚えるが、まるで目的のこと以外一切の付和雷同がないのがGUZE(グゼ)である。

GUZE(グゼ)の全身が黄金色に輝き出した。

その輝きは次第に大きくなりいきなり収束しGUZE(グゼ)の※第6チャクラ サードアイに

集中すると輝きは※第7チャクラに移動、

クラウンチャクラから黄金の柱のように

天空へ向けて解き放たれた。

その眩い輝きは遠くからでも観測可能なほどに強烈な輝きだった。

「神聖封印解除」とGUZE(グゼ)が言葉を

口にすると黄金の柱は徐々に光を失い始め

その代わりに左腕に集中し始め、やがて左腕全体から左手の平に輝きは収束し黒き魔女の

胸の封印へ向けて解き放たれた。

黒き魔女カトリーヌはGUZE(グゼ)のように

黄金に輝いたが次の瞬間、その肉体は金色の

粒子が弾けるように消失した。

「やはり耐えられなかったか。」と

GUZE(グゼ)が口にするや否や添えられた

左手を中心に右手も前に出し

「失われしかの者を見前にて復活させよ。

【人魔降臨】」と唱えると

目の前に四散した筈の光の粒子が集まり

薄ぼんやりと黒き魔女カトリーヌの姿が見え

始めた。

その姿は段々と鮮明となり、まるで別の次元から次第にこちらの世界に出現するかのように色濃く実像に近づいた。

完全に黒き魔女が復活した刻(とき)は僅か

数秒しかかっていなかった。

「肉体の器(うつわ)は復活させた。後は…。」

そう言葉を口にするとGUZE(グゼ)は

両方の手のひらを結跏趺坐(けっかふざ)で

座している両足の上に置き左手を下に右手をかさねると※禅定印(ぜんじょういん)の印をくみ目を閉じ瞑想を始めた。

瞑想を始めて僅か数秒でGUZE(グゼ)の肉体から幽体が離脱し目にも止まらない速さで

その場を離れ黒き魔女カトリーヌの霊の追跡を始めた。

その速度は凄まじくあっという間に黄泉比良坂(よもつひらさか)の国の入り口の穴がある場所まで移動していた。

「ここを通るのは二度目だが。」と

GUZE(グゼ)は空中に浮遊した状態から大地に

降り立った。

足元には※彼岸花(ヒガンバナ)があたり一面に

咲き誇っていた。

「相変わらず壮麗な景観だが、少し寂しさを

感じるな。」

一瞬そう思ったGUZE(グゼ)だが

「感傷に浸っている場合ではないな。」

「彼女を探さなくては。」

目を閉じGUZE(グゼ)は黒き魔女の居場所を

特定するため心眼で探し始めた。

「あそこか。」と言うや否や瞬時にその場に移動、黒き魔女は黄泉比良坂の入り口とされる黒い穴の数百メートルのところまで来ていた。


第8話完 続く


※第4ハートチャクラ 丁度心臓の位置にあり 愛情や他者とのつながり感情を司るチャクラ

※第6サードアイチャクラ

眉間の中央にあるとされ霊的・精神エネルギーを司るとされるチャクラ

遠視、インスピレーションを司るチャクラ、

人によって予知等の力も司る。

※※第7クラウンチャクラ   

悟りなど高次元とのつながり、全智を

司るとされる。

高次元と繋がることで無限のエネルギーを

えることができるとされる。

※瞑想時等に組むとされる印(いん)の名称。

左右どちらの手を下にするかに意味がある。

左手を下にする方は教えを説く右手が下は

教えを受けるとされる。

GUZE(グゼ)は当然、左手が下。

※続・まだ題名のない小説

第15話に記載あり。














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