第4話
「美しき黒き魔女篇」(前編)
GUZE(グゼ)は山道を通り徒歩で下山していた。
無論GUZE(グゼ)の能力を持ってすれば移動は
容易だが久しぶりの外界を楽しみながらも
他に事情があった。
自然を楽しみながら若干和んだ表情だった
GUZE(グゼ)は表情を引き締めて蒼天を見つめた。
「来たか。」と言葉を発すると
目を閉じて虹色の放射線上の波を波紋が広がるように目にも止まらぬ速さで地域全体に放出した。
その広さは数十キロに及ぶ。
その広大な空間が下界(現実世界)と完全に
いつ脱した世界を形成した。
そこへ瞬時に空より飛来する者があった。
それはミサイルが着弾したようなスピードにも関わらず、何の音も立てずに地面直前に
ふんわりと優雅に着地した。
「お初にお目にかかりますGUZA(グゼ)。」
と黒いマントを羽織り黒い喪服風でありながらレース網が首元と胸とミニスカートの裾と手首にあしらわれ、太ももまである紐で結ぶロングブーツと胸元にチャームポイントといえるリボンをあしらったゴスロリ調ドレスの淑女がGUZE(グゼ)の前に降り立った。
「わたくしの名は、カトリーヌ・フォン・ブレルと申します。黒き魔女を名乗っておりますわ。突然で誠に申し訳ありませんが、御命頂戴いたします。」
と魔女特有の黒のとんがり帽の額におしゃれなリボン、つばの部分にはレース柄のふさがついた帽子を取り右脇に挟むとドレスの裾を丁寧に掴み頭を下げてお辞儀をした。
とほぼ同時に黒のとんがり帽を被り乗ってきたであろう箒(ほうき)を大きな円形の水晶がはめ込まれた杖に変えて身構えた。
美しい女性(美少女)だった。
歳の頃は16、17歳だろうか。
縦のロール髪が朝日に照らされ光り輝く金髪は透けてさえ見え端正な顔立ちはギリシャ彫刻を思わせる。
まだ少し幼さが顔の表情に残る少女で
瞳の色は海の深さを感じさせる
マリンブルーだった。
胸は膨よかで全体のバランスが極めて良くできた彫刻を思わせる印象だ。
「それではまず小手調べと参りましょうか。」とカトリーヌと名乗る金髪碧眼の黒き魔女は弾丸の如く懐近くに迫り杖を素早くGUZE(グゼ)に振り下ろした。
だが不思議なことに杖はGUZE(グゼ)の
からだを通り抜け地面に叩きつけられた。
その杖を中心に半径数十メールに渡り
地面が陥没した。
「たいした破壊力だ。」と微笑を浮かべながら少し感心したようにGUZE(グゼ)は言った。
「余裕がお有りですのね。
ですがこれならどうでしょうか。」
と黒き魔女は矢継ぎ早にGUZE(グゼ)に向け
杖を振るった。
脳天、肩、胴体、薙ぎ払い、ありとあらゆる突きと斬撃を試みたが当たらず、最後は
「ドーン」と音速の壁を破る衝撃音さえ聞こえる攻撃を放った。
「そんな馬鹿な!これほどの接近戦の攻撃をしても擦りもしないなんて。ありえない!」
と黒き魔女は多少落胆した表情で語ったが
次の瞬間、「GUZE(グゼ)、今度は全ての攻撃が音速を超えるものです。
全て捌き切れますか。」
黒き魔女の猛攻が始まった。
ショートな風火水地の無詠唱4大魔法と
雷光闇魔法までも格闘戦に取り入れ攻撃したがGUZE(グゼ)には擦り傷すら与えられない。
周りの景色は接近戦の攻撃とはいえ
音速越えの攻撃と魔法によって木々や花々や大岩が瓦解しまさに荒野になる有様だ。
一連の音に聞こえるほど「ドーン、バーン、
バキーン」と連続攻撃の猛攻を放ったが
黒き魔女は「そんな何故!」と苦虫を噛み潰したような表情になり「この手だけは使いたくありませんでしたが、仕方がありません。」と美しい顔の頬を赤らめながら
ウインクでチャーム(魅了)の魔法をかけ次の瞬間、その綺麗な御御足(おみあし)を高く蹴り上げハイキック、からの後ろ回し蹴りを放ったが
ミニスカートが派手に捲れレース柄で小さなリボンがポイントの絹の黒下着が見えた。
更に後ろ回し蹴りで黒いレース柄のリボンのデザインがおしゃれな下着1枚の薄い布地から垣間見られる彼女の形の良いお尻が露になり、最後は踵蹴り(かかとけり)を紐のロングブーツの少し厚底の踵に全力を注ぎ放った。
いずれの攻撃も最上位の強化魔法が付与されていた為、衝撃音のみならず凄まじい衝撃波が放たれあらゆる面で世界一危険な攻撃、足技だった。
最後の踵蹴りは巨大な爆発音が響き渡り土砂が吹き飛ぶ杖の数倍の陥没の巨大クレーターができた。
「本当に凄い威力だな。」といつの間にか黒き魔女カトリーヌの背後に立つGUZE(グゼ)が
口にした。
「そんな!今の攻撃すら通用しない!」と
振り向きGUZE(グゼ)を見て落胆した表情で黒き魔女は口にした。
「そうでもない、おそらく私でなければ死体さえ消し飛び蒸発するほどの破壊力だろう。」とGUZE(グゼ)は口にしたが
「それだけですか。」と少し小さめな声で黒き魔女は口にし、ミニスカートの裾を手で押さえ美しい顔の頬を少し赤らめ膨らませた。
「それ以外に何がある。」
「もうよろしいです。女性としての魅力に自信がなくなりました!」とある意味、微笑ましい膨れ面で黒き魔女カトリーヌは口にした。
黒き魔女はまごうことなき美しい女性だ。
彼女のチャームの魔法と下着と形の良いお尻が見える攻撃は並の男ならば誘惑され動きを止めるぐらいの効果はあった筈。
無論、GUZE(グゼ)からもチャームや黒い下着やお尻は間近で見えていたはずだが、それさえも通用しないのがGUZE(グゼ)である。
女性としての矜持を傷つけられたが、
立ち直りつつ黒き魔女は言葉を発しようとした時、
「とはいえ女性の攻撃を躱(かわ)し続けては
失礼というものだろう。今度は躱さないから
打ち込んでみるといい。」とGUZE(グゼ)
は一切の迷いのない自信に満ちた立ち姿で口にした。
「それはご丁寧にありがとうございます。」と
言うほぼ同時に黒き魔女は懐に潜り込み
頭上からGUZE(グゼ)の脳天目掛けて杖を打ち下ろした。
ところが音速越えの衝撃音以外は地面も
周りの景色も変化がなかった。
不思議に思った黒き魔女はGUZE(グゼ)を見るといつのまにか左の手のヒラが杖の下に添えられていた。
慌てた黒き魔女はハイキックを繰り出し回転力を利用した前以上の踵蹴りを放った。
無我夢中のなりふり構わない攻撃の為、先程以上の勢いでスカートは捲れお臍(へそ)が丸見えになるほどの勢いで黒下着とお尻が見えたが、杖が振われた以上の音速越えの衝撃音以外は周りの景色に変化も地面の陥没も起きてはいなかった。
またも不思議に思いGUZE(グゼ)を覗きこんだ黒き魔女カトリーヌはやはり左の手のヒラが
添えられているのを見て驚愕した。
と同時に自分の体勢で右足にGUZE(グゼ)の
左の手のヒラが添えられ黒下着が丸見えなのを恥ずかしんで右足を慌てて引き抜き宙返り、お尻が丸見えになりながらも一回転し
ふわりと優雅に着地した。
少し距離を取りスカートの裾を押さえながら頬を真っ赤にしてGUZE(グゼ)に問いかけた。
「何故あなただけでなく周りに何も変化がないの!」
彼女ほどの美女の黒下着やお尻を間近に見ながら何も感じない、ある意味失礼な
何の動揺もない無表情でGUZE(グゼ)は答えた。
「簡単なことだ。いかに破壊力があろうとも
同じ速度、威力、重力、回転力、貴方の体重も全て考慮に入れ同じ力で受け止めれば
変化は何も生じない。」
「え、あの一瞬でそこまで考慮して対応したというの。」と驚き黒き魔女は恥ずかしさ
を忘れてスカートを押さえる手を退け立ち尽くした。
「そうでもない。最初にあなたが攻撃してきたおかげで大体の察しがついたのだ。」
とGUZE(グゼ)は言ったが
黒き魔女は心の中で
(だからといって
そんな対応が普通できるものではないわ。
まして私は最上級の強化魔法を付与して
攻撃したのよ。なのに魔法も使わずにどうやって。いえ何よりそんな対応を平然と。)
黒き魔女カトリーヌの中に戦慄が走った。
この短い間にそれだけの対応をしてのけるのはGUZE(グゼ)の実力が自分より遥か上にあるからではないのか。
いや少なくとも接近戦は自分より数段上なのだ。
心に浮上した戦慄からなる不安と恐怖を
押し止めながら黒き魔女は答えた。
「流石、GUZE(グゼ)!接近戦では分が悪い
ようですね。
それでは黒き魔女本来の戦いを披露させていただきますわ。」
そう言うや否や無詠唱でファイヤーボールを
GUZE(グゼ)に向けて放っと間髪入れず
少しでも威力を増すために詠唱、魔力を杖の水晶に収束し「我が前に立ちはだかる愚かなる者を灼熱の炎で焼き尽くせ、インフェルノ(灼熱火炎地獄)」と最大級の魔法を解き放ち
GUZE(グゼ)を燃やした。
「今度こそ終わりですわよ、
GUZE(グゼ)」
「灼熱の炎で死体も残らず焼き尽くされなさい。」
黒き魔女カトリーヌは高笑いを含めながら
あたり一面インフェルノの炎で焼き尽くされ
炎に巻かれていくGUZE(グゼ)の姿を観つめていた。
第4話完 続く
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