第8話 よみがえった思い

今日もいつも通りの業務。だがしかし、いつもより集中力にかけていた。


沢田のラブレターの件が、まるで最近の俺の恋愛事情であるかのように、引っ掛かってしかたがない。小学生の頃のことを、こんなに引きずるなんて驚いた。


今日は、ミスこそしてはいないが、本当に効率が悪い。早めに帰って、ゆっくりすることにした。

ゆっくりするとはいえ、沢田のラブレターのことを考えたくなかったので、いつもはサボっている家事をこなすことにした。

食事と洗濯と順調に進んだため、部屋の片付けまで手を伸ばした。

脱ぎ捨てた服や積み重なった書類を整理して、見も心もスッキリする作戦だ。

まずはベッドをキレイにし、少しだらけた後で机の整理に取りかかった。

資格の教科書や文庫本をせっせと片付けていく。ついに、机の上にものが乗っていない状態になり、自分の部屋とは思えないキレイさに感動した。

机の上には小学生の頃から使っているデスクマットを引いており、当時入れていた仮面ライダーのブロマイドや、高校生の頃にもらった受験の心得10ヶ条などが露になった。

そこで、ふと一枚の写真が目に入った。俺が小学6年生の陸上記録会で、リレーの選手として走っている写真だ。胸がキュウっとなるのがわかった。これは、高山夏実から貰った写真だったのだ。せっかく部屋が片付いてウキウキしていたのに、かえってドツボにはまる結果となってしまった。余計あの頃を思い出してしまった。

この写真は、厳密には高山夏実のお母さんが俺の母親にくれた写真だ。実は高山夏実とは幼稚園から同じで親同士も知り合いであるため、このようなやり取りがあってもおかしくはないのだ。高山母がたくさん写真を撮ってくれる人だったため、高山と仲の良い子にはよく渡していた。


この写真にまつわる思い出はそれだけではない。俺はこの写真により大切な友達を失うかもしれなかったのだ。








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