第6話 あの頃 ~翔太~
しかし、高山さんから、沢田の話が出て、浮かれていた気持ちが少し緊張に変わった。
沢田とは仲は良かったが、高山さんとの関係の中には入れたくない。高山さんに、沢田と俺が何か繋がりがあると思われている、ということになんだかモヤモヤした気持ちになった。
沢田は小学生の時、俺に好意を持ってくれていた。
5年生のとき、一度ラブレターもどきを貰ったのだが、やんわり断った。当時は付き合うという概念がなかったから、断るということもなかったが(笑)。当時、沢田が俺に好意があるということは、公言されていたため、知っている人は多い。沢田とは仲は良かったが、同じような恋心を向けてあげられなかった。
卒業の少し前、沢田から再度ちゃんとしたラブレターを貰った。
俺は、高山のことが好きだったため、どうしても沢田の思いを受け取れなかったのだが、沢田とは仲の良い友達ままでいたかった。
2回目の告白では、遠回しに、沢田の思いを受け取れないと断言した。俺と沢田はこの件の後も、特に関係性は変わることはなく、普通の友達だった。沢田本人は、俺が別な人を好きなことに気がついているようだった。
しかしながら、厄介なことが起きていた。沢田の取りまきが、俺が沢田の告白を受け入れたと判断したらしく、勝手に噂が広まっていた。
小学生の噂なんて、一度広まったらとまらない。
もし、高山の耳にこの噂が入っていたら、と思うと、心臓が縮まるような気がした。
高山に知っててほしくない。知っているのかどうか、答えを聞きたくない。でも、早く聞かなくちゃ。
下校直前、高山が多目的室へ一人で向かうのをみて、すかさずついていった。二人きりになれるタイミングはここしかない。
「高山、俺が沢田からラブレター貰った話知ってる?」
「あー、うん。知ってるよ!なんでー?」
俺は、少し気が遠のいた。高山があっさり返して来たこともショックで、弁解する気力が残ってなかった。
おれは適当にはぐらかして、その場を立ち去った。
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