第3話 迷路の中の光
羽田空港に到着し、放心状態で電車に乗った。羽田から実家までは電車で二時間程度。早く家に帰って泣きたかった。頭がおかしくなりそうだった。おばあちゃんのことや北海道の思い出がフラッシュバッグしないように、移動中は必死に漫画を読んだ。
万が一、号泣しても大丈夫なように、実家までは特急で帰ることにした。
座席に着き、漫画に全集中力を注いでいたところ、何やらボリュームを抑えた声が通路側から聞こえてきた。
「あの~、すみません、あの~」
私の集中力もこの声を跳ね返すほど鉄壁ではなかったため、注意が削がれ、声のする方へ顔を向けた。なんと、声の主はこちらを向いて声を発しているではないか。7秒ほど固まった後に、やっと「私ですか?」と聞き返した。
「そうです!高山夏実さんですよね?小学校で同じだった!覚えてるかな?俺俺!松本翔太!絶対高山さんだ!その表情も反応も!」
松本翔太?小学校??
あぁ、松本翔太だ、、、
私が忘れるはずのない名前だ。
なぜここにいる?なぜここで私と会話している?本当に松本翔太なのか?これは夢か?
ここのところ、脳が正常でなかったからか、予期しないイベントに瞬時に反応できなかった。
「こんなところで会うなんて思ってなかったよ!久しぶりだね!」
私は彼のテンションの高さに圧倒されていた。
「松本くんか!よくわかったね!覚えてるよ!」
やっとのことで発した言葉は、完全に棒読みだった。
「その棒読み感も変わらないね!ってかなに松本くんって!なんか仰々しいじゃん!」
小学生の頃と変わらない距離感でいいのだとわかると、とても安心した。
ちょうど通路を挟んで向かい側の席に座っていたため、お互い通路側に座りながら、話すことにした。
小学校を卒業してから、絵画のように大切にしていた松本翔太との思い出が、13年の時を経て、新たに塗り足されるとは思っていなかった。
悲しみに浸らなくて済むし、久しぶりの再開と言うのは楽しいものだ。
私は数時間のおしゃべりを楽しむことにした。
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