第2話 つかの間の休息

札幌に着き、真っ先におばあちゃんの病院へ向かった。もう目を開けないかもしれない、と先に札幌入りしていた母から事前に聞いていたため、色々と覚悟していた。そのおかげか、おばあちゃんを見て、取り乱すことはなかった。

もしくは、会社勤めのストレスによりぶん殴られまくって、ダメージを受けてボロボロになっていた心が、痛みに鈍感になっていたからかもしれない。


問いかけには微少ながら応答してくれていたが、ちょうど眠りに入っていたらしく、この日は一目見てすぐに退散した。

母と二人で、おばあちゃん家へ戻った。


いつも母親とは、話したいことをダラダラと話しているのだが、今回ばかりは話題に気を使い、なるべく笑えるような話題を提供した。

私は、自分のことよりも他人のことを考えてしまう傾向がある。本当は自分が泣き崩れてもおかしくないくらい悲しいはずなのに、母親や叔母を明るくしようとか、おばあちゃんにはどんな話題を提供しようとか、周りのことばかり考えていた。そういう性分なのだから仕方ないし。今回はそうすることで、泣かない自分を保てているのだから、Win-Winである。


次の日また面会に行った。

目を閉じたままのおばあちゃんに何を話そうかと考えながら病室へ入ると、

なんとおばあちゃんは目を開けて、微力ながらに手を動かしこちらに手を振った。

昨日は何してたの?と質問までしてきた。

なんという回復力。担当医も驚いていた。


感染症対策のため、長時間いることは叶わなかったが、おばあちゃんと会話ができたのは本当に奇跡だった。


翌日、私の札幌滞在最終日の面会ではタイミングが悪く、前日ほどのやり取りはできなかった。それでも、微力ながらに声を出して返事してくれた。

私の心の中では大号泣だったが、叔母と母親の前で泣くのは嫌だったので、必死に耐えた。目が充血してたので、耐えているのはバレバレだったとは思うが。


楽しい札幌滞在だったとは、とてもじゃないが言えない。しかし、苦しい日常から数日離れられ、やっと息が吸えたような気がした。



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