『通勤』 19
そこに、またまた、邪魔が入った。
オールマイティー司書さまから電話である。
出ないわけには行かない。
『はい。ぼくです。』
『ああ、あなた、ちょっと、来てください。仕事の話です。』
『はあ。わかりました。』
仕事の話です、と、言われたら、業務命令である。
ただし、所長に、外出許可をもらわなくてはならない。
この場合、所長は正当な理由があるならば、拒否できるが、オールマイティー司書さまに、説明する必要がある。
それが、所長には、ひどく屈辱的なのだ。
だから、拒否はしない。
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ぼくは、オールマイティー司書さまの部屋に入った。
建物自体が、独立した、司書館である。
ここで、火星から、太陽系の端までの、全ての図書館の司書を管理している。
所長さんの方は、いわゆる、図書館官僚機構の一部だが、司書は、司書庁の配下にあり、オールマイティー司書さまは、司書長官の直轄下にある。
大臣と言えど、あまり、無理は言えない。
オールマイティー司書さまは、実は、所長さんたちの、監視役でもある。
ぼくは、両方の配下にある。
だから、ぼくは、所長さんからしたら、スパイみたいなものだが、所長さんには、ぼくの人事に関して、一定の権限があるのだ。
前にちょっと言ったように、左遷させるのはわりに簡単で、さらに、くびにすることも、まあ、可能である。
ただし、お互いが牽制するから、滅多にはないが、たまに、所長さんのルートと、司書庁のルートが、ぶつかることがある。
所長さんは、大臣の配下だから、政治的な理由が、実務に入り込むことがある。
司書庁は、政治には、関わらないのが、モットーである。
一番極端な場合は、いわゆる、焚書事件だ。
新地球政府がようやくできたあと、一回だけ、焚書事件があった。
実は、真相は未だに分からない。
銀河連盟の中の、ある勢力が、地球政府に圧力をかけて、地球の宗教的な書物を、出来るわけもないのに、可能な限り、排除しようとしたことがある。
代わりに、ある宇宙宗教を、地球に導入しようと企んだと見られている。
遥か昔に、当時の地球の大国が、植民地拡大を、宗教的な拡大とセットにしてやったみたいなことを、やろうとしたのだと、言われている。
それから、300年くらい後に、地球は、核兵器や、化学兵器を大量使用した、ばかな世界戦争をしてしまったことから、地球人類は絶滅寸前になり、統合力がまるで無くなり、介入した銀河連盟に助けられ、やっとこさ、地球人類は生き延びた。
新しい地球政府は、銀河連盟の指導によって作られた。
だから、地球政府は、長らく銀河連盟の指導下にあり、その命令には逆らえなかった。
そんな時代だったが、銀河連盟の内部も、一枚岩というわけでもなかったのだ。
地球から、宇宙オーケストラが飛んだのは、そうした頃のことだった。(『オーケストラ宇宙を行く』参照。(未完))
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